蒼き流星SPTレイズナー ~ジリオン・ジ・オリジン(2)~
『蒼き流星SPTレイズナー』は日本サンライズが1985年から86年にかけて送り出したロボットアニメ。それまでタカラをスポンサーとして『太陽の牙ダグラム』(1981年)『装甲騎兵ボトムズ』(1983年)『機甲界ガリアン』(1984年)を送り出した高橋良輔監督が、「ガンダムのような作品を」というバンダイからのオーダーに応えて登板した作品となる。
レイズナーはガンダムを彷彿とさせる起伏に富んだ群像劇の面白さと、ハイレベルなメカアクションとを兼ね備え、当時の人気作品となった。反面、玩具販売の不振から唐突な打ち切りとなり、リアルロボットアニメ不遇の時代を印象づけた作品としても知られる。
OUT1986年8月号より
レイズナーの作画では、ボトムズやガリアンで高橋良輔監督の信頼も厚い作画スタジオ「アニメアール」が活躍した。キャラデザインを谷口守泰社長自らがつとめた他、メカアクションでは吉田徹、沖浦啓之、黄瀬和哉の各氏らが重厚さとスピード感を兼ね備えたメカ作画を披露している。
この黄瀬氏や沖浦氏がジリオンで作監をつとめ、のちにI.G作画神話を築いたのは有名な話だが、吉田氏や谷口氏、山本佐和子氏、毛利和昭氏、貴志夫美子氏など、アニメアール、スタジオムー(アール分室)の他の主力メンバーもジリオンに参加していることはあまり知られていない。
アニメージュ1987年8月号アニメーター色紙プレゼントより、吉田徹氏のイラスト
レイズナーの背景設定には、米ソの冷戦構造をそのまま宇宙開発に持ち込んだ未来史や、多重人格のコンピューター、同じ起源を持つ異星人との戦いなど、当時のサンライズらしいSFマインド溢れる設定が用意された。原作者として名を連ねているのは高橋良輔監督と、シリーズ構成の伊東恒久氏。
伊東氏は月光仮面などで知られる川内康範氏の直弟子で、『巨人の星』(1968年)なども手掛けた大ベテラン。サンライズではのちに富野監督と共同で『ガンダムF91』(1991年)の脚本も手掛けている他、ジリオン開始前夜の1987年1月には、レイズナーの完結編となる小説を上梓している。
伊東恒久著『蒼き流星SPTレイズナー 刻印2000』(アニメージュ文庫刊)表紙(草の根マーケットより引用)
以前(こちら)にも書いたように、伊東氏はこの小説レイズナーの出版と同時期に、プランニングコーディネーター 植田もとき氏からジリオン第1話の脚本を依頼されている。そのまま伊東氏は4月スタートのジリオンのメインライターとして、リックスとの因縁や最終回といったキーとなる回の脚本を担当、また「設定協力」としてもクレジットされている。
レイズナーもジリオンと同じく人類と異星人との戦いを描くファーストコンタクトテーマのSFだが、そのラストは大きく異なる。地球人とグラドス星人をそれぞれ代表する主人公エイジと宿敵ル・カインの一騎打ちのドラマと並行して、地球とグラドスとの空間を断ち切る「刻印」が発動、彼らの断絶を描いてレイズナーは幕を閉じる。
ジリオンのプランニングコーディネーター 植田もとき氏は番組の開始当初、サンライズ作品を強く意識していたという。その植田氏が、レイズナーを終えたばかりの伊東氏にメイン脚本を依頼するのは必然的な流れだった。
レイズナーの脚本、作画スタッフを引き継いだジリオンは、確かにタツノコ、サンライズの遺伝子の幸せな化学反応から生まれた作品だったといえるだろう。
レイズナーの脚本、作画スタッフを引き継いだジリオンは、確かにタツノコ、サンライズの遺伝子の幸せな化学反応から生まれた作品だったといえるだろう。