ZILLION ARCHIVE ROOM(Yahooブログ移行版)

Yahooブログから流れてきたTVアニメ『赤い光弾ジリオン』非公式ファンサイトです。元々は放映30周年を記念する週刊ブログでしたがそのまま不定期で続いています。

押井守監督とジリオン

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第15話より。ジリオンにもやっぱり登場した牛丼屋
 
機動警察パトレイバー」シリーズや『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』(1995年)の押井守監督が「丸輪零」のペンネームでジリオンに参加していたことはよく知られている。
押井氏が絵コンテを手がけたのは第2話「頭上の敵を撃て!」と第15話「生か死か!?宿命の戦い(前編)」の2本。押井氏が生み出した第2話のパトロール兵コンビはのちのエピソードでもたびたび登場し、ひそかな人気キャラとなった。
 
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2話に登場したパトロール兵コンビ
 
この凸凹コンビの小柄なほうは、押井氏がかつて監督した『うる星やつら』(1981年)でチビ(初代)を担当し、ジリオンと同年に公開された実写映画『紅い眼鏡』(1987年)にも出演した西村智博(現・朋紘)氏が演じている。シンガーソングライターでもある氏は劇中でも歌声を披露し、CDでも主役トリオを食う存在感を示した。特に4枚目のCD『お洒落倶楽部』ではCDのトリを飾り、印象のすべてを西村氏が持っていってしまった。
また、この凸凹コンビのデザインは作画監督浜崎博嗣氏が手掛けており、この歌うパトロール兵のモデルは浜崎氏ご本人、またそのゴツイ相棒は、浜崎氏と同じく竜の子アニメ技術研究所に在籍し、この第2話にも原画で参加している金子浩司氏がモデルとのこと。(2018/05/06追記)
 
 
15話にも、押井氏はネタを忍ばせている。ここで初登場するJ.Jの昔の仲間は押井氏と西久保監督の周辺人物がモデルとなっていた。制作現場のスタッフが続々アニメに登場したタイムボカンシリーズさながらのこのバラエティ番組感には、笹川ひろし総監督、うえだひでひと監督の下で長らくボカンシリーズに親しんだ押井氏らしい遊び心が伺える。ちなみにボカンシリーズには押井氏自身も『ゼンダマン』(1979年)の「オシイ星人」や、『逆転イッパツマン』(1982年)の「若作りの丸輪さん」として登場済。
 
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15話に登場したJ.Jの昔の仲間
 
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この4人のモデルと押井氏との関係は以下の通り。
 
ニック=西久保瑞穂
本作の監督。押井氏のタツノコ時代の同期にして、I.G時代の盟友
 
マッシ=真下耕一
押井・西久保両氏のタツノコ時代の同期。押井氏の教育係でもあった。真下氏の初監督作『黄金戦士ゴールドライタン』(1981年)にも押井氏、西久保氏が参加している。番組開始当初は本作にも参加予定だった
 
モーガン=古川順康氏
タツノコ入社当日に押井氏が配属された編集室の先輩で、押井氏や西久保氏の麻雀仲間でもある。第5話「アップル命令違反!?」の絵コンテも手がけた
 
ボー=(不明)
他のキャラのモデルと勘案すると、押井・真下・西久保3氏の同期で、本作でも演出の要として腕を振るったうえだひでひと監督(「綴爆」名義)である可能性が高い
 
アニメに登場する彼らのキャラクターデザインは、やはり浜崎博嗣氏が手掛けている。アニメディア別冊では浜崎氏が「ボーのモデルは、スタッフの木村信一ではない」と発言しているが、これはデザインの話だと思われる。木村氏の名前は動画クレジット(のち原画にも)に見えるので、これは浜崎氏の仕込んだイタズラだろう。
モデルとなる人物そのものが描かれていたという押井氏直筆の絵コンテが、なんらかの形で陽の目を見ることを期待したい。
 
押井守氏はジリオン以降、TVシリーズの絵コンテ、演出を手がけていない。
ジリオンに参加した経緯と作品への感想は押井氏や石川光久氏の関連書籍などに断片的に語られているが、歯に絹着せぬ発言で知られる氏にしては、かなり好意的なものだ。
 
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アニメージュ1987年4月号より

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梶山寿子著『雑草魂~石川光久 アニメビジネスを変えた男~』より

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野田真外著『前略、押井守様。』より
 
押井守氏は激闘編でもコンテを手がける予定があったそうだが、氏はこの頃OVA機動警察パトレイバー』(1988年)のための企画集団「ヘッドギア」に参加しており、激闘編スタッフにその名前はない。このパトレイバーに黄瀬氏や後藤氏を筆頭とするジリオンの作画スタッフが「アイジー竜の子」として参加、のちの劇場版(1989年)へとつながってゆく。
パトレイバーの劇場2作目『機動警察パトレイバー2 THE MOVIE』(1993年)には西久保監督が演出で参加、西久保組の色彩設計 遊佐久美子氏とともに、劇場1作目とはケタ違いのリアルな空気感を演出した。西久保氏、遊佐氏はその後も押井作品の中核スタッフとなり、『攻殻機動隊』(1995年)『イノセンス』(2004年)『スカイ・クロラ』(2008年)、西久保氏を監督に据えた『宮本武蔵 双剣に馳せる夢』(2009年)などを押井氏や黄瀬氏らとともに生み出した。世間で押井作品特有と思われている画面のルックは、実は西久保作品のものだともいえる。
 
次回は、OVA『歌姫夜曲』の企画経緯と、その後の展開に関する都市伝説(?)の検証。