ジリオンに見る80年代洋楽の影響と、音楽担当の入江純氏
ネットではたびたび指摘されているように、ピュアストーンには元ネタと思われる曲が存在する。アメリカのロックバンド ジャーニーの1986年のヒット曲「スザンヌ」がそれで、ベースとシンセの音色や、特にイントロなどはかなり意識して似せているように思える。
Journey「Suzanne」
ジリオンの歌は他にも洋楽風のものがいくつかある。
Journey「Keep on Running」
The Pretenders「Don't Get Me Wrong」
こうやって並べてみると、やはり西海岸系というか、ヘビィなバンドサウンドではなく、シンセやギターを印象的に使ったメロディアスで爽やかなサウンドが志向されているようだ。これは監督西久保氏とともにジリオンのサウンドを統括した音楽担当 入江純氏のこだわりでもあるのだろう。
アニメV別冊『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より
音楽業界有数のアレンジャーで、当時から多数のアイドル歌謡で編曲を手がけている入江氏は、YMO4人目のメンバーと呼ばれる松武秀樹氏とともにシンセユニット「logic system」としても活動している。単に予算不足でシンセを使わざるを得なかったアレンジと違い、シンセサウンドの魅力を知り尽くした入江氏から生み出されるサウンドは当時最先端の新鮮さをアニメ界にもたらした。サンダーバードを彷彿とさせるビッグポーター発進シーンに古めかしさが感じられないのは、氏の音楽による力が大きい。
入江氏はジリオンと入れ替わるように終了した『がんばれ!キッカーズ』(1986年)にその名が見られるものの、アニメなどのサウンドトラックはあまり手がけていない。氏の代表作ともなったジリオンは西久保氏のアメリカ志向をサウンド面から表現し、映像とキャラクターの瑞々しい魅力を引き出した。以前(こちら)にも書いたように、ジリオンは作品人気に伴って音楽ソフトもヒットし、その好調なセールスがOVA歌姫夜曲の制作にまで繋がったのだから、作品に対する入江氏の貢献は非常に大きかったといえるだろう。