ZILLION ARCHIVE ROOM(Yahooブログ移行版)

Yahooブログから流れてきたTVアニメ『赤い光弾ジリオン』非公式ファンサイトです。元々は放映30周年を記念する週刊ブログでしたがそのまま不定期で続いています。

ササユリカフェ「後藤隆幸×西久保瑞穂 お話し会」レポート

東京 西荻窪のササユリカフェでは後藤隆幸個人展が開催中(2017年12月11日現在)。
今回は、その連動イベント「後藤隆幸×西久保瑞穂 お話し会」への参加機会を得たので、そのレポートをお届けしたい。思いのほか長文となったため、展示内容については次回更新でレポート予定。
 
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ササユリカフェ入り口のPOP
 
当日のカフェは17時で一旦クローズとなり、19時からトークイベントがスタート。
後藤氏と西久保氏はここを見ている方には周知の通り、『赤い光弾ジリオン』のメインキャラデザイナーとチーフディレクターであり、これまでDVD-BOXでの対談や、一昨年のブルーレイ発売時のイベントでもトークを披露している。
 
以下のテキストはメモを元に再構成しているため、発言の前後関係や言い回し、ニュアンスは実際の発言とは異なること、一部表現を変更している部分があることにご留意いただきたい。間違いがあった場合は遠慮なくご指摘いただければ幸いです。
 
場所:ササユリカフェ(東京 西荻窪
日時:2017年12月2日19時〜20時半
 
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ビル入り口の貸切看板
 
後藤隆幸氏(以下、後藤) 今日は西久保さんと、ということでジリオンの話をしたいと思ってまして。あと、西久保さんからは水谷(優子)さんの話もうかがいたいと思ってます。
西久保瑞穂氏(以下、西久保) はい、でもごっちゃんと組んだのはジリオンと、あとは『電影少女』くらいしかないんだよね。ごっちゃんにはジリオンをあんまやってくれなかった恨みがあるんで、今回はそれも言いたい(笑)
後藤 (苦笑)ところでみんなジリオン知ってます?どうです?
(35人の観客がほぼ全員挙手。西久保監督まで手を挙げていたのはおかしかった)
後藤 よかったぁ。年齢も高めで(笑)、ホームグランドな感じで。今日はほぼジリオンオンリーで行きます(笑)
展示は見られました?セル画綺麗でしょう?タツノコさんからもらったセルをウチ(プロダクションI.G?)のスタッフが大事に保存してたものなんです。
西久保 ジリオンもかなり昔のことなんで、記憶が飛んでるんだけどね。最初の関わりからいくと、監督として石川(光久氏)から話が来たのがそもそも遅くて、入った時にはごっちゃんのキャラもすでにあったんだよね。実は石川、他の監督にも話を持ってってたのでは?
後藤 キャラは(浜崎氏や水村氏との)コンペだったんですけど、なんで僕のキャラを選んだんですか?
西久保 最初から良かったからね。あと、なんとなく自分が入る前からごっちゃんのキャラに、という雰囲気だった。ただ、当初は小学生みたいなかわいいキャラで、それはセガジリオン銃の企画だと思うと年齢を上げる必要があって。直すのは嫌だった?
後藤 いや全然!当時はそういうものだと思ってて。初めてのメインキャラでしたし。
西久保 しばらくしてから、ごっちゃんの最初のキャラを改めて見たんだけど、すごく良かったんだよね。自分が後藤隆幸の魅力を殺してしまったんじゃないかと。ごっちゃんはホントは丸モノのほうが向いてる。けどそういう仕事が来ない、アイジーは特にそう(一同笑)
後藤 そう!(力説)もうねー。この銀英伝とかもう大変(トーク前、プロジェクターで後藤氏の新作銀河英雄伝説Die Neue These』のPVが流れていた)
西久保 最初はJ.C.スタッフの別のアニメ(おそらく女神転生のこと)をやっててなかなか現場に入れなくてね。それで、いつも色指定やってくれてる遊佐(久美子)さんが激怒して辞めてしまったくらい。前作のドテラマンからも、とにかく時間がなくて。
後藤 自分が参加した当時のタツノコは、あかぬけ(『昭和アホ草紙 あかぬけ一番!』)、光の伝説、ドテラマンと連続して打ち切りだったんですよ。
西久保 僕はあかぬけとかは見てなくて、ジリオンで初めて後藤隆幸を知ったんだよね。で、始まって国分寺のビルのひとフロアがスタジオで、全部ジリオンかと思ったら違って(おそらくスタジオ鐘夢のこと)、今度はごっちゃんが他の仕事しててジリオンを全然やってくれない(笑)
後藤 そのときオレンジロードをやってて。鐘夢のメンバーの意向もあるし、ジリオンは戦闘モノで大変だからやりたくないって。でもそれも結果オーライで、それで黄瀬(和哉)氏や沖浦(啓之)君が出てきたから。
西久保 大阪(おそらくアール/ムーのこと)は、あと大島(康弘)くんが良かった。(竜の子アニメ技術)研究所では浜ちゃん(浜崎博嗣氏)と 、水村(良男氏)。ごっちゃんと浜ちゃんが同い年くらいで、それで最年長だったよね。黄瀬や沖浦は20歳くらいだったはず。
スケジュールは苦しかったけど、間にお休み(8月の再放送期間)とかトリッキーなことをやって、アフレコにはほぼ絵が入ってた。セル枚数制限は公称3500枚だったけど、沖浦の回は5000枚とか使ってて、貞光(紳也)さんと井口(忠一)さんの回は2500枚とかに抑えてもらって、バランスを取ってた。
そう、ここで沖浦のこと愚痴っていい?枚数削減のために2コマ指定とかを3コマに戻してたんだけど、ヤツは枚数を減らされないように、1コマ3コマ2コマみたいに、タイムシートを複雑にしたんだよ。本人に聞いたら、そうすれば減らせないだろうと思った、って(一同笑)
黄瀬は手が早かった。黄瀬は水村と組んだ時に、半パート分の水村の原画をノーチェックにして、他の原画を水村の絵に合わせて修正して作監を間に合わせた。当時は似せるのも上手かったし、早かった。いまはもう…ね(笑)
後藤 いまのアニメは大変すぎるんですよ!情報量も多いし。
西久保 いまみたいな総作監制じゃなかったから、若手の作監が自分の絵を出せたのが良かったよね。それで人が育った。ごっちゃんは賞も貰ったし。
後藤 あれは僕じゃなくて、キャラがもらった賞なんですよ。ジリオンの当時は『聖闘士星矢』が流行ってて、女の子はそっち行って、男の子の行き場がジリオンだったのかな、と思ってます。
西久保 そう?ジリオンはアニメのマニアじゃないところに受けたよね。以前のイベントで当時のファンと話したら、普通に見ていたアニメの一つ、という感じだった。
あと、ジリオンのときは水谷さんも賞をもらってたのに、自分には賞がもらえなかった。あんなに頑張ったのに(笑)
後藤 作品賞もらったでしょ?
西久保 知らないなぁ、植田(もとき氏)がもらったのかな。
水谷といえば、シュラトでのあの3人の起用にはシュラトの音響の田中(英行)さんにも、ジリオンの清水(勝則)さんにもええっ!?って言われたんだよね。普通は他の音響監督の決めたキャストを持って来たりしないから。でもジリオンですごく良かったから使いたかった。
水谷さんはすごく物持ちが良くてね、とりあえず家でこれだけ見つけて持って来た。
 
(壮行会の際の追悼イラストと、歌姫のハーモニーの絵、サイコーユ鬼のセル画のファイル)
 
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OUT1988年8月号より、『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』のファーストシーンから
 
西久保 これ、ごっちゃんの描いたやつだよね?
後藤 あぁ〜、そうですねぇ〜。描きましたねぇ〜。
西久保 あとこのAPPLEって文字も手描きなんだよね(客席どよめく)。あの頃はコンピューターとかなかったし、たぶん遊佐さんが直接描いて。
後藤 これ、ぜひみなさんも見てください。
(ファイルを客席に回す)
西久保 ジリオンの頃はみんな若かったよね。キングレコードの大月(俊倫)さんとかも新人だったし。セガさんもスポンサーが初めてだったので緩かった、うるさい某社と違って(笑)でも、次からうるさくなったらしいけど。(ボーグマンのことか?)
京アニさんも当時は仕上げだけの会社で。そういえばシュラトのころ、シュラトをやってた葦プロの近くにサンライズさんがあって、そこのデニーズで京アニの八田(英明)さんにばったり再会したんだよね。それで京アニに誘われたんだけど、いま思っても、自分とはカラーが違いすぎて(笑)
後藤 いまは京アニさんはアイジーより大きくなられて。自社で小説を出して、ばんばん自社オリジナルで勝負してる。アイジーは置いてかれちゃってます(涙)
西久保 アイジーも、あとマッド(マッドハウス)もオリジナルとか冒険をやらない、フツーの会社になっちゃったよね。昔は社長がうんといえば動けたけど、いまは株式会社だからね、それから冒険できなくなったんじゃないかな。マッドもね。売れなきゃいけなくなった。
マッドで攻殻のスロットの仕事をやって、それでまたアイジーに来てごっちゃんが攻殻やってるのを見て、「やっぱすごいなココは」と思って。すごいクオリティの絵を描いてる。それで、なかなか他のこと(オリジナルの企画?)ができない(笑)
自分もアイジーの株主だから、経営が大事ってのもわかるんだけども。ごっちゃんに至っては副社長だからね。
後藤 いや、副社長じゃないので!副社長なんてポストはないです。いち取締役のいちアニメーターです。Wikipediaにも書いてあるけどアレ間違いなんで、この機会に声を大にして言いたい!石川とも取締役会とかでしか会わないし、そもそもほとんど話もしてない(笑)
西久保 そうだったの?まぁでもジリオンはアイジーというか、石川がケチだから作れたんだよね。石川と二人で(フィルム現像所の)イマジカに行って、帰りにガス欠になりそうだった時、石川は5リットルだけ入れてた。あと、アフレコ用の間に合わせフィルムを作った進行を叱ってたり、とにかく無駄を省くことを徹底していた。そのおかげでアフレコにちゃんと色がついた。
後藤 でも、ぼく地球(OVAぼくの地球を守って』)とかまでは色付きだったけど、最近のアイジー作品は…(笑)とにかくいまのアニメはほんと大変なんですよ、線も多いし。
 
(ここから質問タイム)
 
質問(関俊彦氏の追っかけだった女性) 主演を関さんに決めた理由は?
西久保 J.Jの少年ぽさに合っていた。だいたいオーディションの最初の声を聞いたときに決めるんだけど、最初の印象がね。主役3人に関しては音響監督の清水さんの推薦も大きかったかな。
 
質問(男性) 17話(「涙!J.Jをさがせ」)に後藤氏が参加してる?原画に「我愛由貴」という名前があるが。
後藤 ええっ!?参加してないです。別の方です。
(質問者) オレンジロードの最終回のあのシーンの作画は誰?
後藤 すいません、全然覚えてないです(笑)自分じゃなかったと思うけど。
 
質問(アップルの胸あきが強烈だった元男子小学生) アップルの胸あきコスチュームはいつ決めた?
後藤 たぶん最初から。完全に狙ってましたね。でも、作監によって強調の具合が違ってた。胸の大きさもよく変わったし。
 
質問(ジリオンがすごく好きだった元小学生) 歌姫夜曲はなんでメカもジリオンもなかったの?
西久保 私の趣味です、申し訳ない。少年の気持ちを裏切ってしまってすいません。…ただ、当時ビデオは高かったし、それを買える大人に向けて作ったつもり。
後藤 そういうことなんで、僕のせいじゃないです(笑)
西久保 言い訳ですけど、TV(シリーズ)はちょうどいい感じで終わったんで、同じことはやりたくなかったんだよね。40話くらいがちょうどいい。シュラトもビデオまでやりたくなかったんでやらなかったし(笑)
 
質問(筆者) ザ・サムライはジリオンと作画スタッフが被っているがジリオンと同じスタジオだった?
後藤 いや、違います。銀英伝じゃないほうの(笑)、「銀河帝国」というスタジオでやってました。とはいえ、なんとなくそのへんのタツノコ関係者がらみの仕事、という感じで。真下(耕一)さんの作品(ドミニオンか?)とか。
(筆者) 真下氏はBDの鼎談によると参加予定だったそうだが、結局ジリオンに参加しなかったのはなぜ?
西久保 頼んだけどやってくれなかった。真下は義理人情では動かない。そういうヤツ(笑)
 
(メモが間に合わず少し飛んでます)
 
水谷優子さんのお話)
西久保 さっき名前の出た大島くんに結婚の話をしたら「アップルと結婚したんですね」と言われて、こないだのあかほり(さとる)くんのラジオでも言われたんだけど(笑)監督が主演女優と結婚したパターンと思われてるけどそうじゃない。川崎逸朗氏の結婚式だかで再会して、それがきっかけ。水谷はやたら正義感の強いところがあり、元気だし、そういうところはアップルに似てたかな。
ミニオンが大好きでUSJにもよく行ってて(笑)東の姫が西に浮気したと言われた。(水谷さんは東京ディズニーランドの看板キャラクター、ミニーマウスを演じていた)
仕事にはストイックなほど打ち込んでいたけど、ちょっと真面目すぎたかも。ただ、自分と結婚してからはユルさが伝染したかもしれない。それまで彼女はファンクラブなどにもマメに関わっていたけど、自分なんかはテキトーだから、それが多少移ったのかな。
千葉のタツノコの別荘にみんなでいってテニスをしたり、芸能人化したいまの声優さんと違ってよく遊んだよね。
後藤 イベントとかの新幹線で水谷さんの隣になったこともあって、そのときすごいドキドキしてたんですよ。
西久保 昔はみんな若かったしガムシャラだったね。いまはみんな歳とって、巨匠になってしまって(笑)浜ちゃんとか沖浦も監督だし、あの黄瀬まで攻殻(ARISE)でやってるからね。
そういえば、ごっちゃんは演出はもうやらないの?
後藤 演出は『乙姫コネクション』でやってます。知ってます?乙姫コネクション。
(会場で一人だけ挙手)
後藤 え、一人!?ありがとうございます。この場で一人かぁ…みなさん知らないですけど、演出、コンテ、デザインとたくさんやった作品なんですよ。
で、一回やって懲りたんです。あ、これは自分には向いてないな、と。もうやらないです。コンテもやらない。とはいえそこの冊子(個人展のグッズ)には描いてるんですけど(笑)
 
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小冊子の後藤氏コンテより
 
西久保 みんなすぐ演出に行っちゃう。沖浦とかまだまだ描けるんだけどね。演出家としては、できるアニメーターが演出に行ってしまうと困る。その点では、ごっちゃんが作画をやってくれてるのはありがたい。
演出もジリオンのころはよかった。1年あれば、放映を見てキャラクターがどんどん変わって行けた。声優さんの演技から膨らむことが多いよね。1クールだと放映見てもフィードバックができない。決めた通りにカッチリ作るしかないから。
後藤 いまは原作モノだからってのもあるので。決まりがあるんですよ、いろいろと。
 
質問 原画は何で描いてる?
後藤 シャーペンです。黄瀬氏はタブレットやってるけど。
西久保 あのワコムのCMのやつね。黄瀬にどう?って訊いたら「紙をめくらなくていいのがいい」って。それで早くなるかっていうと別の話だけど(笑)
アイジーでスケジュール守るのはごっちゃんと西尾(鉄也)くんかな。
後藤 いや、でも最近はムリです。歳取ると集中力がもたないんですよ。57でこんな銀英伝とか描いてる自分を褒めてあげたい(笑)
(後藤氏は57歳、西久保氏は今度65歳になるとのこと。どちらも全然そんなお歳には見えないけれども)
西久保 演出も歳取ると辛い。昔は絵コンテもパッと書けたけど、いまはまず絵コンテを描くことに集中するぞ!ってところから入らないといけない(笑)それで、一時間もするとふぅ〜って感じになっちゃう。
ごっちゃんはCGアニメはやらないの?
後藤 いや、でも自分アニメーターなんで。CGで何やるんですか?
西久保 絵は描かないで動きだけとか。やっぱ絵を描きたい?
後藤 いやいや!会社員なので、会社がやれと言えばやりますよ、もちろん。動きだけでも。ただ、まだそういう話はこないですね。絵を描いてくれって話がまだあるし、それがあるうちは、そっちでやりたいかなぁ。
西久保 福島(敦子)さんがCGのアニメを見た時(おそらく『アタゴオルは猫の森』のこと)、キャラが崩れてない!と驚いていた。いかにも作画の人の感想だよね(笑)
 
(ここから手描きとCGにまつわる業界の問題の話でしたが、ちょっと専門的でついていけないところがあったため割愛)
 
後藤 あ、もう終わり?最後にひとつだけ質問受け付けます。
 
質問(先ほどのジリオン大好き男性) いまジリオンを見てどう思う?
西久保 ブルーレイのコメンタリー収録の時に改めて見たんだけど、確かにいまの目で見たら色々言いたいことはあるけど、当時よくがんばったなぁと。好きな作品だし、あの当時じゃないと作れない作品だった。自分も若かったし、いまの押井(守氏)や自分が作ったらああいう風にはならない。いまやったらまた違うものになると思う。
後藤 今回、昔の絵を見て未熟だなぁとは思うけど、当時のガムシャラなときしか出なかった味でもあると思ってます。
皆さんご来場ありがとうございました。あと、帰ったらDVDとかでジリオンを観てください!
 
(筆者はこのあと家に帰ってGyao!で鑑賞しました)
 
 
次回は、ササユリカフェでの展示およびオリジナルグッズのレポートをお届け予定。