ZILLION ARCHIVE ROOM(Yahooブログ移行版)

Yahooブログから流れてきたTVアニメ『赤い光弾ジリオン』非公式ファンサイトです。元々は放映30周年を記念する週刊ブログでしたがそのまま不定期で続いています。

ドラマvsキャラ萌え?ジリオンの脚本家陣とアニメディアの外伝小説

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第24話「大冒険!戦士オパオパ」より
 
以前にも触れた(こちら )通り、ジリオンのシナリオスタッフで最初に作品に参加したのは関島真頼氏で、プランニングコーディネーター 植田もとき氏とともにジリオンの企画を立ち上げた氏は、そのまま文芸構成としてシリーズに関わっている。
そしてもう一方の企画者である植田氏は、『蒼き流星SPTレイズナー』(1986年)を終えたばかりの伊東恒久氏に第1話の脚本を依頼した(こちら )。
ジリオンはこの伊東氏と山崎晴哉氏といった東京ムービー系のベテランライターと、関島氏、渡辺麻実氏といった若手ライターがミックスされた陣容でスタートしている。
 
赤い光弾ジリオン』シナリオスタッフリスト(敬称略)
伊東恒久 1,2,4,7,10,11,14,18,23,29,30,31話
山崎晴哉 3,6,12,15,16,19,26話
渡辺麻実 5,8,9,13,17,20,24,27,28話
山田隆司 22,25話
小山高男(高生) 21話
関島真頼 文芸
西久保瑞穂 OVA歌姫夜曲
 
歌姫の西久保監督は特殊な例で、おそらくは脚本はなく、直接絵コンテを描いたため、脚本としてもクレジットされているものと思われる(宮崎駿監督作品などと同様)。
 
残念ながらすでに故人である山崎晴哉氏は、日本最初のTVアニメ『鉄腕アトム』(1963年)以来『巨人の星』(1968年)などを手がけており、1987年当時すでに大ベテランといえるキャリアを持っていた。氏は東京ムービー作品との縁が深く、宮崎駿監督の『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)にも脚本でクレジットされている。ムービーのほぼ同期といえる伊東恒久氏との関係はムービーでシナリオ部門の長だった山崎敬之氏の著作『テレビアニメ魂』に詳しい。
山崎氏は日テレの日曜早朝枠である『キン肉マン』(1983年)『剛Q超児イッキマン』(1986年)に続いてジリオンにもそのまま参加、ジリオンの後番組『闘将!拉麺男』(1988年)ではシリーズ構成の他、脚本のほとんどを自ら手がけている。続く『ミラクジャイアン童夢くん』(1989年)でもシリーズ構成を務めており、スポ根ものなど勝負の世界を描くアニメの第一人者だった。SFアクションであるジリオンでも、主人公のライバルとなるリックスとの対決シーンなどにそのセンスが生かされたのではないだろうか。
 
山崎氏の盟友である伊東恒久氏はこれまでも何度か触れているので(こちらこちら)軽く触れるに止める。
レイズナージリオン以降の伊東氏は山崎氏の童夢くんなどに参加する傍ら、サンライズハインライン原作の『宇宙の戦士』(1988年)や富野監督の『ガンダムF91』(1991年)、『新世紀GPXサイバーフォーミュラ』(1991年)などを手掛けた。こちらも長年の付き合いであるタツノコでも『ロビンフッドの大冒険』(1990年)に参加し、同時期に劇画原作にも進出するなど、90年代まで精力的な仕事ぶりを見せている。
 
関島氏の師匠でタツノコギャグの重鎮である小山高男氏についても、以前の記事(こちら)を参照されたい。
 
山田隆司氏は西久保監督ら演出陣と同世代で、ジリオンと同時期放映の『ハイスクール!奇面組』(1985年)とその後番組『ついでにとんちんかん』(1987年)、シリーズ構成も手掛けた異色作『マンガ日本経済入門』(1987年)などの間を縫っての参加。奇面組、とんちんかんで組んでいる小山高男氏の縁からだろうか。氏の手掛けた第22話「ウソから出た大勝利!」などは(小山氏の21話のインパクトに隠れがちだが)、沖浦氏による悪ノリ気味の作画も楽しいギャグ篇といえるだろう。
 
若手組の渡辺麻実氏はシナリオスタッフの紅一点で、いわば「キャラ萌え路線」とでもいえるエピソードを多数執筆している。また、渡辺氏は当時のニュータイプ誌で今でいう腐女子的な視点も含むカップリング論を連続で展開しており、若年の視聴者と近い目線を持っていたようだ。
 
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ニュータイプ1987年9月号より
 
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ニュータイプ1987年12月号より
 
ドラマ派の年長組とキャラ派の若手組が入り混じったジリオンは、激闘編に入るといわばギャグ派ともいえるその中間世代の参入により、その振れ幅はより大きくなった。

一見水と油とも思えるこれらの要素が破綻なく収まっているあたりが、31話と短いシリーズながら、ジリオンという作品に他に代えがたい魅力を与えているのは間違いないだろう。

 
この「振れ幅の大きさ」は、文芸(タツノコでは、脚本スタッフの取りまとめを主に行う役職のようだ)としてTVシリーズ全期間とOVAにもに関わった関島真頼氏の意向も大きそうだ。関島氏はCDでパロディ色の強い寸劇を発表する一方で、シリアスな外伝小説も手掛けている。
 
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また、関島氏に先立って、渡辺氏もアニメディアのふろくで外伝小説を手掛けている。先のニュータイプの記事の「某誌でアップルに娘をもたせている」は、この短編のことだろう。こちらはTVシリーズ放映中に書かれた関係上、設定的に本編と繋がらなくなってしまっているが、それも含めてオリジナル作品ならではの高い自由度がうかがえる。
 
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アニメディア1987年8月号ふろくより
 
最近はサンライズ作品などで過去作の続編・外伝小説の展開を目にする機会が増えている。ジリオンの展開は相当望み薄だが、タツノコの今後の動きに期待したい。
 
 
次回は、様々なルートで流通した、ジリオンのポスターについて。