ササユリカフェ「TAKAYUKI GOTO ART WORKS」レポート&トークイベント感想
※展示は随時入れ替えもあるようなので、このレポート(12/2訪問)の情報は古くなっている可能性があることをご了承願います
カフェ入口のパネル
まず、3畳ほどの展示エリアの壁面には『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』(1988年)や『ぼくの地球を守って』(1993年)のセル画が複数掲示されていた。後藤氏のトークによると、これらはI.Gアーカイブ室の収蔵品らしい。現在の商業アニメではセル画自体が存在しないため、その意味でも貴重なものだ。
『後藤隆幸画集 Gの旋律』より
展示のメインは大量のファイルで、展示スペースこそ非常に狭いものの、作品ごとに原画や修正原画、版権イラスト原画、版権ラフなどが数冊〜十数冊にファイルされている。なかでもジリオンは最多16冊のファイルとなっており、大抵の版権イラストは知っていると自惚れていた筆者でさえ見たことがないイラストがあり、とても興奮させられた。歌姫に比べて数は少ないもののTV版第1話の修正原画などもあり、こちらも見逃せない。
ファイルはジリオンの他に『ぼくの地球を守って』『ドテラマン』(1986年)『精霊の守り人』『攻殻機動隊SAC』、およびオリジナル作品のファイルがあったが、ドテラマン以前の作品や、うっすら期待していた『ザ・サムライ』の他、『きまぐれオレンジロード』『敵は海賊』『電影少女』『赤ちゃんと僕』『ポポロクロイス物語』『ハンター×ハンター』『黒子のバスケ』等々の関連資料がなかったのは、やはり版権の関係だろう。
しかしながら、ことジリオンに関していえば、比較的有名なレコードやビデオのジャケットイラストから、グッズの原画、かなりレアものとなる初期宣伝資料のイラストやアニメ誌ふろくの原画、もちろん歌姫夜曲の修正原画まで、とにかくその物量には圧倒させられた。自分のような30年来のジリオンファンにはこれ以上ない至福の空間といえる。
ひとつ気になる点もあった。ファイルにはこれまで後藤氏の作とはされていないイラストの原画もあったように記憶しているが、これはどういった経緯だろうか?たとえば以下はそれぞれ浜崎博嗣氏、数井浩子氏だと認識していたイラストなので、少々気にかかった。
CD『あぶないMUSIC』ジャケットイラスト
ササユリカフェでは、今回の個人展に合わせたグッズの販売も行われている。
紙製コースター
こちらはランチを頼んだ際にいただいたコースター。店頭でも複数種類まとめて販売されている。後藤氏らしい可愛らしいキャラクターと優しい世界観がこの一枚の中に表現されたコースターは、リラックスしたランチタイムに似合いそうだ。
ちなみに、ランチの特製キーマカレーは素材の味の要所をスパイスが締めるような繊細な味で、こちらもオススメしておきたい。
小冊子の表紙と内容の一部
前回も少し紹介したこちらの冊子は、これまで画集などで断片的に見られた未公開企画のイラスト、キャラデザ等の資料や絵コンテなどが半分、残りの半分がラフスケッチとなっている。
ポストカードセット
こちらは、5年前に出た後藤氏の画集でお目見えしたオリジナルキャラクターをメインにしたポストカードのセット。鮮やかな色遣いが美しい。何と12枚組という大盤振る舞いだ。
前回書けなかったトークイベントの補足と感想も記しておきたい。
西久保監督が語られた、黄瀬和哉氏と水村良男氏の作監エピソードはI.G15周年記念出版『軌跡―Production I.G 1988‐2002』の押井・黄瀬対談にも出てくるが、ジリオンのスタッフリストを見ると、黄瀬氏作監で原画に水村氏がクレジットされた回はない(逆はある)。ノンクレだった可能性もあるが、もしかすると、これは会話とは前後関係が異なり、「ジリオンでは水村氏が黄瀬氏の絵柄で作監」し、「他作品(OVAパトレイバーか?)では黄瀬氏が水村氏の絵柄で作監」した、という話なのかもしれない。
『軌跡―Production I.G 1988‐2002』より
以下、個人的な感想などを。
後藤氏の個人展連動イベントでゲストが西久保監督とはいえ、まさかここまでジリオンづくしのトークになるとは、いい意味で裏切られた感がある。柔らかい物腰ながら話術の巧みな西久保監督と、その人の良さが随所から滲み出る後藤氏のトークは、そのテーマがジリオンであることも相まって、夢見心地な時間を過ごさせていただいた。マニアックにもほどがある自分の質問にも丁寧にお答えいただき、何もないところからこのブログを立ち上げた自分のこの一年のご褒美を頂いた気さえする。ジリオン30周年の最後にこんな機会を作っていただいた後藤さん、西久保さん、ササユリカフェのスタッフの皆さんには感謝の言葉しかない。本当に、ありがとうございました。