ジリオンの総集編ビデオ
ジリオンのビデオソフト化は以前(こちら)にも触れたとおり、放送開始から比較的早い時期に行われている。
TVシリーズ放送中に発売された「誕生編」ビデオは第1話、第2話をそのまま収録したもので、現在では、その後藤隆幸氏によるパッケージイラスト以外の魅力に乏しい。ジリオンの人気次第ではこの一本でソフト化が打ち止めとなった可能性を考えると、レンタル店に置かれるビデオソフトに第1話を収録することで、そこからTV放送の視聴者を増やす狙いもあったのかもしれない。
誕生編パッケージイラスト
今日的な目で楽しめるのは放送終了後の1988年にそれぞれ発売された「総集編vol.1 JJ対リックス 宿命の対決」(7月21日発売)と「総集編vol.2 チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ」(8月21日発売)の二本となるだろう。こちらはTV放送のフィルムを独自に編集した内容で、「誕生編」と異なり音楽のステレオ化と再アフレコも施され、独自の作品といえるほどの変化を遂げている。こちらはビデオレンタルと同時に、ファンのコレクターズアイテムとしても想定されていたものと思われる。
「総集編vol.1 JJ対リックス 宿命の対決」の構成担当はメインライターの伊東恒久氏。徹底的にシリアスに寄った対決のドラマは氏の過去作、たとえば『巨人の星』(1968年)や『あしたのジョー』(1970年)などを彷彿とさせる。
J.Jとリックスのみをクローズアップした構成のためか、他の登場人物の出番は少なく、その影響でかアバンタイトルのナレーションをJ.J役関俊彦氏自らが行っており(TVはナレーターの小林修氏の担当)、その意味でも貴重な作品といえる。
動画の投稿テスト。ということでVHSしか出てないジリオン総集編1の冒頭ナレーションなどを。やたら聞きなれてる内容だけに、J.J役、関俊彦氏によるナレーションがすんごく新鮮。 pic.twitter.com/txQjJ8Uwgk
— SiFi-TZK (@SiFi_TZK) 2018年5月12日
徹底的にvsリックスに絞り込んだ構成のため、リックスの死でビデオが終わってしまうのは必然とはいえ、その割り切りの大胆さに、初見の人は少々面食らいそうだ。また、J.Jのピンチの原因が毎度ジリオンの撃ち過ぎであることが分かってしまうので、J.Jファンには痛し痒しな作品でもありそう。
本作はVHS版とともにLD版も発売されており、浜崎博嗣氏のジャケットイラストもそれぞれ異なる。
ジャケットイラスト2種
「総集編vol.2 チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ」は逆に、主人公J.J以外のチャンプとアップルをクローズアップしている。構成はこちらもTVシリーズで多くのシナリオを手掛けた渡辺麻実氏。以前に書いたように(こちら)、ドラマ派の伊東氏に対するキャラ派筆頭がこの渡辺氏と言っていいだろう。
こちらはチャンプ回だった9話と、アップル回である25話を再編集して収録。ホワイトナッツメンバーがVTRを鑑賞している設定で、いきなり主題歌のカラオケバージョンから始まって説明をザクザクと端折る展開は、初見の視聴者をあまり想定しないビデオならでは。
男性ファン待望の25話冒頭のアップルのシャワーシーンは尺の関係でカット…されたように見えて、ラストに詰め込まれた名場面集のような形でネタとして扱われている。
この終盤用に新録されたセリフは感動の最終回をチャンプ役井上和彦氏の家庭事情を暴く楽屋オチに改変(前作vol.1が最終回まで到達せずに終わった補完の意味もありそうだが)するなど、CD「お洒落倶楽部」やカセットブック「シークレット ティ・パーティ」と並んで大胆なセルフパロディを展開した。
VHS「赤い光弾ジリオン チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ」の大トリのセリフがコレ(笑
— SiFi-TZK (@SiFi_TZK) 2020年1月5日
この一言だけのために速水奨氏が出てるのは贅沢だねー。 pic.twitter.com/QspnxEgZYz
本作もVHSとLDが発売、ジャケットイラストは後藤隆幸氏がつとめている。
ジャケットイラスト2種
上記2種の再編集版ビデオはVAPから発売されたが、もう一本、キングレコードからもミュージックビデオ「エイミ・ペンギンズダイアリー」が、「総集編vol.1」と同日の1988年7月21日に登場している。構成は西久保監督自らが歌に合わせた映像編集をストーリー展開に沿って行うという離れ業で、たった30分のビデオでTVシリーズを見終わった気分にさせてくれる。
こちらのジャケットイラストは浜崎博嗣氏。
LD版ジャケットイラスト
本作はOVA「歌姫夜曲」とともに2015年に発売されたブルーレイボックスの特典として収録されたが、VAP版の上記2作は絶版のままとなっている。
アニメージュ1988年8月号の広告
ちなみに、「誕生編」と同じくTVシリーズをそのまま収録した「赤い光弾ジリオン ベストセレクション」(1988年9月21日発売)も総集編に続いて登場している。収録されたエピソードはアニメージュで募集されたアンケートから選ばれた15,16,17話。こちらも、後藤隆幸氏のジャケットや特典ポスターは新規描き下ろしとなっている。
ジャケット(後藤隆幸画集「Gの旋律」より)
特典ポスター(後藤隆幸画集「Gの旋律」より)
ジリオンは放映終了前後で大きく盛り上がった人気に応える形で、6月のOVA歌姫夜曲、7月に総集編vol.1とペンギンズダイアリー、8月に総集編vol.2、9月にベストセレクションと立て続けにビデオがリリースされており、またその合間を縫うようにレコード「あぶないMUSIC」やカセットブック「シークレット ティ・パーティ」、コミック「MIX NOISE」なども登場している。これら、1988年の6月からの10月にかけて登場したメディア作品の総額は定価で4万円を超えるため、レンタルビデオ以外で、リアルタイムですべてを観たファンはあまりいなかったのではないだろうか。
次回は、放映当時のサイクルでTVシリーズを1年間再視聴して得られたネタの第一弾、繰り返される天丼ギャグについてを予定。
今年もよろしくお願いします。