歌姫夜曲30周年!ジリオンのスピンオフ作品いろいろ
OUT1988年8月号より
本作はTVシリーズの好評を受けて制作されたスピンオフ作品。スタッフはメインキャラクターデザインの後藤隆幸氏を総作画監督に迎え、西久保監督以下TVシリーズのメインスタッフが続投したほか、武田一也氏や奥田万つ里氏、岸田隆宏氏などの強力なスタッフが新たに加わっている。
同人誌「歌姫夜曲作画集」より
『ジリオン クリエーションズ2』より
以前にも触れたように(こちら)本作はTVシリーズを放映していた日本テレビや、ビデオを発売していたバップではなく、タツノコとキングレコードによる製作となっている。そのためか本作は音楽面が充実しており、タツノコの植田、キングの大月の両プロデューサーや、西久保監督の意向が強く反映された作品といえそうだ。
『あぶないMUSIC』CDジャケット。駿河屋より引用
まずは「歌姫夜曲」のサントラも兼ねているCD『あぶないMUSIC』(6月発売)。ラジオ番組を模したナンセンスなパロディが楽しく、また、ラストには有名な深夜ラジオ番組「ジェットストリーム」のようなペーソスも漂う。
『エイミ・ペンギンズダイアリー』LDジャケット。駿河屋より引用
続いて同じくキングから7月に発売されたミュージックビデオ『エイミ・ペンギンズダイアリー』は、近年登場したブルーレイBOXに映像特典として収録された。自分のようにブルーレイ化によって初めて観たファンも多いのではないだろうか。
本編はエイミの語りをブリッジに配したソング集で、映像はTVシリーズのシーンをビデオクリップ的に編集したものが使われている。
同じ7月にはバップからも総集編ビデオ『JJ対リックス 宿命の対決』(1988年)が登場。こちらも、TV版の映像を使用しつつもアフレコは新規に行われており、J.Jとリックスの対決をクローズアップしたシリアスな作りとなっている。
バップのもうひとつの総集編、8月に登場した「チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ」の構成は、こちらもやはりTV版脚本スタッフの渡辺麻実氏。
『シークレット ティ・パーティ』パッケージ
渡辺氏はカセットブック「シークレット ティ・パーティ」(9月発売)も手掛けており(こちら )、こちらも劇中劇を基本としたパロディ、声優ネタが頻出、シリアスな伊東版と好対照をなしている。
アニメV別冊『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より
もう一つ、アニメVから発売された歌姫のムック(8月発売)から、歌姫のプロローグ的な小説「歌姫序曲」。著者はこちらも渡辺氏だが、本作は歌姫に直接繋がるエピソードであるためか、パロディなどはごく控えめなものとなっている。
『後藤隆幸作品集MIX NOISE』より
10月に出版された後藤氏のコミック「MIX NOISE」のその半ば以上はジリオンネタで占められている。コミックのストーリー協力には『ドテラマン』(1986年)でも後藤氏と組んだ貞光紳也氏がクレジットされており、ほのぼのギャグと正統派の外伝ストーリーが楽しめる。
VHS版『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より、インナーのオマケ漫画
このコンビは歌姫の特典オマケ漫画も担当しており、TV版のイメージをもっとも色濃く残すチームと言えそうだ。
これらの展開が終了した翌1989年は、4月に植田もとき氏プロデュース、西久保氏が監督の『天空戦記シュラト』がTVに、7月に石川光久氏と押井守監督、黄瀬作画監督の元、ジリオンの作画スタッフが多数参加した『機動警察パトレイバー THE MOVIE』が劇場に、12月には後藤氏がキャラデザと総作画監督をつとめた『敵は海賊』が衛星放送にそれぞれ登場し、ジリオンの主要スタッフは各作品へと散ってゆくことになる。
次回は当時のちょっとした情報と、新事実が判明したセル画を引き続き紹介予定。