ジリオンの元ネタ、パロディなどの落穂拾い
今回も息抜き編。これまでジリオンの元ネタについていくつか記事を上げている(こちらやこちらなど)が、意図的に引用したと思われる設定や演出、セリフなどについて、パロディ、オマージュまでも含め、一つの記事にするほどでもない小ネタをわかっている範囲でまとめてみたい。
スケバン刑事オマージュと思われるイラスト(過去のProductionI.G公式サイト後藤隆幸ギャラリーより引用)
まずは基本設定から。
「エイリアンとの戦争の渦中に、その不利を覆す謎の超兵器がもたらされる」という物語の発端は、実はアニメではけっこうありふれている。『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)や『伝説巨神イデオン』(1980年)、『超時空要塞マクロス』(1982年)などがそれに当たり、1987年当時の直近ではジリオンと縁の深い(こちら)『蒼き流星SPTレイズナー』(1985年)があり、後年の『新世紀エヴァンゲリオン』(1995年)などもそのバリエーションといえるだろう。ジリオンのラストでその超兵器のバックボーンに迫る展開などは、ヤマトよりイデオンにより近いと言える。
後藤隆幸氏が表紙、挿絵を手掛けた小説版イデオン(amazonより引用)
その超兵器であるジリオン銃は元々セガが販売していた光線銃なのだが、アニメオリジナルの「ターゲットを分子崩壊させ消滅させる」という設定は、やはりタツノコ作品『新造人間キャシャーン』(1973年)に登場する「MF銃」の応用と思われる。このMF銃はロボットだけを消滅させる超兵器であり、量産の暁にはキャシャーンらの敵となるロボット軍団に対する決定打となりうる存在であるなど、ジリオン銃と基本設定の多くを共有している。ちなみに本作にはジリオンの監督である西久保瑞穂氏や、各話演出としてジリオンを支えたうえだひでひと氏らが参加しており、その意味でもタツノコの伝統を感じる。
キャシャーンのヒロイン上月ルナとMF銃(コトブキヤHPより引用)
ホワイトナッツの男2人と女1人のチーム構成はやはりタツノコの『未来警察ウラシマン』(1983年)やタイムボカンシリーズの三悪トリオを彷彿させるが、アタックチームのJ.J、チャンプ、アップルに、バックヤードのデイブ、エイミ、Mr.ゴードを加えた「主人公・クールガイ・ヒロイン・巨漢・子供・ボス」のチームと考えると、実は『科学忍者隊ガッチャマン』(1972年)のフォーマットであるのかもしれない。ガッチャマンの源流はタツノコの創業者吉田竜夫のマンガ「忍者部隊月光」であり、こちらもタツノコ伝統の配置と言えそうだ。
次はノーザ軍。ノーザのキャラ名はなぜか当時人気を誇ったアメリカのプロレスラーのモジリとなっているようだ。リックスはNWAやWWEチャンピオンのリック・フレアー(「狂乱の貴公子」というキャチフレーズもリック・フレアーのもの)、アドミスがアドリアン・アドニス。また、ノーザウォーリアーズのガードックがディック・マードック、ソラールがエル・ソラール、ナバロがネグロ・ナバーロと思われる。
また、幻のラスボスとして初期設定でのみ名前が見られた「バルグ三世」の元ネタはおそらくWWE(WWF)チャンピオンに長く君臨したハルク・ホーガンだろう。ラスボスに相応しい人選だったのではないだろうか。
「バルグ三世」についての記述。ニュータイプ1987年5月号より
そのノーザ、特にリックスのビジュアルの元ネタと思われるのが、ジリオンの放送直前まで放送していた特撮作品『超新星フラッシュマン』(1986年)のラスボス、大帝ラー・デウス。リックスの使っているムチに変化する剣も、同作のサー・カウラーの持つ槍になるムチが元ネタかもしれない。(もしくは、更にさかのぼって『機甲界ガリアン』(1984年)の蛇腹剣か)
ちなみに西久保監督、押井監督などのジリオンスタッフの多くが後に参加した「機動警察パトレイバー」シリーズのメカデザインを手掛けたのは、フラッシュマンやガリアンのデザイナーでもある出渕裕氏だった。
各話のネタは枚挙にいとまがないので以下にまとめて記した。まだまだあると思われるが、それらは見つけ次第追加することとしたい。OVA歌姫夜曲やCD、関連商品に関してはパロディそのものがメインだったりもするので、そちらはまた別途紹介することにしたい。
第1話 映画『ペーパームーン』(アディの元ネタ)、横田基地(コヨタベース)
第8話 『ハクション大魔王』(「呼ばれて飛び出てオパオパー!」)
第10話 モブキャラにキャプテン翼、こち亀、マクロスなど
第15話 石川光久氏(イシカワ中尉)
第17話 『科学忍者隊ガッチャマン』(J.J再登場のシーン)
第18話 珉珉(こちら)
第19話 映画『恐怖の報酬』(爆弾運搬)
第22話 『あかぬけ一番!』(「チョッキー♪」)
第25話 映画『グロリア』(こちら)、フランソワーズ・アルヌールとソフィア・ローレン(おそらくフランソワーズ・ローレン先輩の元ネタ)
第28話 『逆転イッパツマン』(「シビビンシビビン!」)
第29話 映画『ターミネーター』(ナバロの最後)
第30話 ゲーム『SDI』(J.Jの遊んでいるゲーム)
第31話 小説『エンダーのゲーム』(こちら)
次回は、当時VHSのみで発売された二本の総集編ビデオを取り上げる予定。