ZILLION ARCHIVE ROOM(Yahooブログ移行版)

Yahooブログから流れてきたTVアニメ『赤い光弾ジリオン』非公式ファンサイトです。元々は放映30周年を記念する週刊ブログでしたがそのまま不定期で続いています。

ジリオンのゲスト声優と、井上キャラモテモテ伝説

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コミックボンボン1987年4月号より
 

今月12日に放映開始32周年を迎えた『赤い光弾ジリオン』(こちらこちら)の放映当時は、TVアニメに替わって新興メディアであるOVAが大きく市場を拡大していた時期でもあった。その変化は声優選びにも影響し、キャリアの少ない若手声優がOVAでいきなり大役を任されることもままあったようだ。ジリオンにおいても、J.J役の関俊彦氏はジリオン同年の1月に発売されたOVA『学園特捜ヒカルオン』(1987年)がその初主演作となっている。

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OVA『学園特捜ヒカルオン』より


4月に放映が始まったジリオンでも、関氏をはじめとした平成を支えていくことになる若手キャストと、昭和に代表作を持つベテラン勢との共演が多々見られる。
有名どころでは『宇宙戦艦ヤマト』(1974年)の真田さん役などで知られる青野武氏が13話のケリー役で、『機動戦士ガンダム』(1979年)のシャア役池田秀一氏が20話のマックス役で出演したほか、『未来警察ウラシマン』(1984年)のフューラー役丸山詠二氏が5話の研究所長役で、数々の吹き替え作品で知られる大木民夫氏が7話のメイヤー役で登場している。


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ケリー中尉(13話)とマックス少佐(20話)


もっと若い中堅クラスでは、ジリオン同年の『機甲戦記ドラグナー』(1987年)の主役トリオの一人タップ役でもあった大塚芳忠氏、同じく放映中だった『めぞん一刻』(1986年)の主人公五代くん役の二俣一成氏、ジリオンのスタッフの多くが参加していた『昭和アホ草紙 あかぬけ一番!』(1985年)のヒカリキン役で井上和彦氏とコンビを組んだ玄田哲章氏など、実力派の男性声優がゲストのクセモノキャラを演じ、強い印象を残している。

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ボルサリーノとチャンプ(9話)

ボルサリーノ役玄田哲章氏はチャンプ役の井上和彦氏と『あかぬけ一番!』の名コンビだが、
タカラの看板玩具『トランスフォーマー』とバンダイの類似路線『マシンロボ』のアニメ化作品で
それぞれ主演しており、その意味ではライバル関係でもある
 

本作のゲストヒロインは、その井上和彦氏のそれまでのキャリアと興味深い関係を見せた。
レギュラーキャラのアップル役水谷優子さん(『マシンロボ クロノスの大逆襲』)とエイミ役本多知恵子さん(『あかぬけ一番!』)を筆頭に、1話ゲストのアディ役神代智恵さん(『星銃士ビスマルク』)、7話のメルウ役高田由美さん(『OKAWARI-BOY スターザンS』)、18話のミンミン役江守浩子さん(『蒼き流星SPTレイズナー』)と、井上氏主演作品でヒロインを演じた女性声優が多数出演しており、さながら井上氏を囲むヒロイン同窓会といった様相を呈している。これが意図的な配役なのかそれとも井上氏の多彩なキャリアのなせる偶然なのか、気になるところだ。

 
類似したキャスティングとしては17話のハイミス役小宮和枝さん(『とんでも戦士ムテキング』で井上氏演じる主人公の母役)がおり、さらにジリオンの翌年にアニメ化され、井上氏の新たな代表作となった『美味しんぼ』(1988年)でも、14話のセシル役荘真由美さんがヒロインを演じるという偶然が起きている。
 
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チャンプとセシル(14話)

井上氏関係以外のゲストヒロインでは、ソラール役の滝沢久美子さんがサブキャラを多く担当し、25話のフランソワーズ先輩も演じた。滝沢さんは西久保監督がタツノコ時代に手掛けた『風船少女テンプルちゃん』(1977年)でタイトルロールを演じ、『タイムボカンシリーズ ゼンダマン』(1979年)でもヒロインとして起用されている。ちなみにフランソワーズの息子ジョニーを演じた坂本千夏さんも、同じく『タイムボカンシリーズ イタダキマン』(1983年)のヒロインを演じており、タツノコ濃度が非常に高い。
 
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フランソワーズとジョニー(25話)
 
押井守氏がコンテを担当した2話のパトロール兵役で印象的すぎる歌を披露した西村智博氏は、押井監督の実写映画『紅い眼鏡』(1987年)に続いての起用。西村氏はデイブ役中村大樹氏とともにジリオン翌年の『鎧伝サムライトルーパー』(1988年)でブレイクしており、ジリオンのCDでの存在感もピカイチだった。
 
他に、当時の新人として山寺宏一氏、堀内賢雄氏、佐々木望氏、桜井敏治氏、平松晶子さんなど、平成でブレイクしたスター声優たちの若き日の演技が堪能できるのも楽しい。往年のアニメをいま鑑賞する醍醐味の一つではないだろうか。
 
 
次回の更新は現在未定。場合によってはYahooブログでは今回が最後の更新となるかもしれない。移転先もまだ未定だが、そちらでもどうぞご贔屓のほどを。

西久保監督フィルモグラフィ(6)落穂拾い篇

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赤い光弾ジリオン』25話「優しき逃亡者アップル」より

前回は2014年の『ジョバンニの島』までを追ったが、今回はその後の西久保氏の活動及び、これまでの紹介から漏れていたOVA闇のパープルアイ』(1988年)と、OVAゼクトバッハ オリジナルアニメーション 第1章 シャムシールの舞』(2011年)について触れたい。

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闇のパープルアイ』は週刊「少女コミック」誌に連載された篠原千絵氏の人気マンガ。連載終了から2年を経た1988年にOVA化された本作のほか、10年後の1996年には雛形あきこ主演のドラマ版も登場している。
このOVA版はミュージックビデオという扱いで、ストーリーなどはない。通常のアニメーションよりも原作のコマやイラストをコラージュしたカットが多く、当時流行した「コミックのイメージアルバム」の映像版といった趣がある。
本作の登場は1988年の11月で、監督を手掛けた西久保氏にとってはジリオンOVA『歌姫夜曲』(1988年)と、TVの『天空戦記シュラト』(1989年)の間、以前の記事では「どんな活動をしていたかは明らかになっていない」と書いた期間にあたる(こちら。その後修正)。制作スタジオがJCスタッフということは、これもOVA女神転生』(1987年)やそれ以前の『みゆき』(1983年)~『軽井沢シンドローム』(1985年)と同様に、宮田知行氏からの依頼だろうか。
 
歌姫夜曲の発売が同年6月だったことを考えると、本作の製作はかなり短期間だったと思われる。ジリオンのスタッフでは脚本の渡辺麻実氏、色彩設計遊佐久美子氏が参加しており、監督としてはジリオンTVシリーズOVA歌姫夜曲の延長線上にある仕事だったのではないだろうか。
 
個人的には、新田一郎氏(元スペクトラム)によるパワフルな音楽は原作の繊細なイメージとそぐわず、全体にちぐはぐな印象はぬぐえない。
西久保氏の次の作品である『天空戦記シュラト』の放映は翌年4月であり、本作の制作が10月までとすると準備期間は5か月しかない。OVA女神転生』と『赤い光弾ジリオンTVシリーズの時と同様、現場作業は同時並行で進んでいた可能性もありそうだ。また、この作品の存在によって、ジリオンが『歌姫夜曲』以降OVAシリーズとして続かなかった理由も、(当時のアイジーが劇場版パトレイバーに専念することになったことと併せて)ある程度まで推察できそうだ。

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ゼクトバッハ オリジナルアニメーション 第1章 シャムシールの舞』より

ゼクトバッハ オリジナルアニメーション 第1章 シャムシールの舞』は、コナミの人気音楽ゲームbeatmania」シリーズの楽曲から生まれた物語が原作、という変わり種のOVA作品。その出自の特異さと、発売が東日本大震災の直後ということもあってか、アニメファンの間でもほとんどその存在が知られていない作品ではないだろうか。
先に触れたように本作の発売は2011年で、西久保監督作品としては『宮本武蔵 双剣に馳せる夢』(2009年)と、東京ディズニーリゾートCM(2012年)などとの間にあたる(こちら)。
架空のファンタジー世界の叙事詩のそのまた一エピソード、という体裁であるため、こちらも残念ながらファン以外には楽しめる作品とは言いがたい。
映像的には『宮本武蔵』からの流れである、手描きとCGを融合した画面が見どころだろうか。一切の説明を排して挿入されるサイバー描写は『イノセンス』(2004年)も彷彿させる。

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ゼクトバッハ オリジナルアニメーション 第1章 シャムシールの舞』より

制作はAICで、なぜ西久保氏が監督に抜擢されたのかはよくわからない。本作の前後のAIC作品で、氏はTVシリーズの各話演出として単発参加しているので、その筋からの依頼なのかもしれない。
また、ジリオン関係者の小川浩氏(元アンモナイト)も本作のプロップデザインとして参加しているが、こちらもAIC作品との繋がりからと思われる。西久保作品の常連スタッフである遊佐久美子氏は本作には参加していない。
本作は「第1章」と銘打たれているが、その後続編などは出ていないようだ。
 
ジョバンニの島』以降の西久保氏は奥様の病状もあってか、あまり活発に活動されていないように見受けられる。
目立ったアニメの仕事としては『屍者の帝国』(2015年)の演出(3名での共同)として参加されている他、2017年からは文化庁メディア芸術祭アニメーション部門の審査員を務められているようだ。これらの講評によって垣間見える西久保氏の志向やパーソナリティは、作品とはまた別の興味を惹かれるものがある。

2017年
2018年
2019年

……本来はこれで終わるはずだったか、今月になって西久保氏のコンテ担当作品の情報が流れてきたので、こちらを紹介したい。

中通りく 非常用持ち出し袋を用意しよう』
 
中通りく」は福島県を応援するご当地キャラのようだ。その関係もあって、防災を啓蒙するショートアニメをこの3月11日に公開したものらしい。
本作の制作の経緯はこちらに綴られているが、なんというか、アヌシー賞作家である西久保氏の参加含め、かえって頭に疑問符が増してしまう不思議な説明ではある。

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中通りく 非常用持ち出し袋を用意しよう』より

わずか4分のWebアニメーションだが、制作には2年もの期間を費やしているとのことで、西久保氏のコンテが描かれたのはかなり以前のことかもしれない。内容はそつのない演出でキャラクターの魅力を見せつつ、非常用持ち出し袋のアピールをさりげなくこなしている。筆者もこれを機会に、非常用持ち出し袋の点検を行った。皆様も是非。
 
 
次回はジリオンの豪華なゲスト声優陣についてを予定。
また、このYahooブログは今年いっぱいで終了とのことで、本ブログも夏ごろまでの移転を検討している。残り短い期間ですが何卒お付き合いのほどを。

アップルの元ネタ

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アニメディア1987年12月号付録ポスター(原画:沖浦啓之氏)より


赤い光弾ジリオン』のヒロイン アップルは1987年を代表するアニメキャラとして高い人気を得たが(こちら)、これは制作側にとってやや予想外の出来事だったようだ。

タツノコにおけるジリオンの前作にあたる『ドテラマン』(1986年)のゲストキャラ サイコーユ鬼の人気を受け、後藤隆幸氏がキャラクターデザイナーとして抜擢されたのは1986年末のことだった。後藤氏の起用には、そのユ鬼とよく似たキャラであるエイミをマスコットキャラとして、当初の番組人気を牽引させたい、との思惑もあったと思われる。

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アニメディア1987年5月号より


読売広告社のプロデューサー大野実氏の当時の弁によると、アップルは堅物の女戦士として構想され、皆にチヤホヤされるエイミに嫉妬するという、実際に制作された本編からはかなりかけ離れたキャラクター造形だったようだ。
これはジリオンタツノコ側プロデューサー岩田弘氏の手がけた『超時空要塞マクロス』(1982年)の早瀬未沙(1983年のアニメグランプリ女性キャラ部門1位)、また脚本の渡辺麻実氏のデビュー作『重戦機エルガイム』(1984年)のガウ・ハ・レッシイ(1984年の同2位)といった、当時人気を博したアニメヒロインたちを念頭に置いてのことだったのだろうか。

アップルのキャラクターデザインは、当時の後藤隆幸氏の他の仕事からの影響が大きいようだ。1988年の『MIX NOISE 後藤隆幸作品集』ではアニメ『光の伝説』(1986年)の上条光、2017年のHOBBY JAPAN誌のインタビューでは『きまぐれオレンジ☆ロード』(1984年から連載)の鮎川まどかからの影響が語られており、他にやはり後藤氏の参加していたアニメ『めぞん一刻』(1986年)からの影響も見られる。

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『MIX NOISE 後藤隆幸作品集』より
 
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HOBBY JAPAN2017年9月号より


胸開きコスチュームの元ネタは『ダーティペア』(1985年)あたりだろうか? 余談だがジリオン放映直前の1987年2月にはダーティペアの劇場版が公開されており、その監督である真下耕一氏がジリオンに合流する予定もあったようだ。

 
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アニメージュ1987年5月号より

快活さや男二人のブレーキ役という点ではその真下氏が手がけた『未来警察ウラシマン』(1983年)のソフィアという先輩がおり 、また、当時人気が爆発していた日本テレビの刑事ドラマ『あぶない刑事』(1986年)で浅野温子さんの演じたカオル巡査あたりも意識されているかも知れない。
結果的に、ルパンの峰不二子や『戦国魔神ゴーショーグン』(1982年)のレミー・島田のような、自立した女戦士という「大人ヒロイン」枠に近い路線を踏襲しつつも、アップルは彼女たちともまた違う新しいヒロイン像を提示した。その反動からか、OVA歌姫夜曲でアップルに与えられた「過去の悲恋」設定は前述の未沙や不二子、レミーにも存在した「大人ヒロインには欠かせない定番の設定」であり、TVシリーズの新鮮なキャラクターがやや損なわれた感もある。
とはいえ、その後相次いでアップル似のヒロインたちが登場した(こちら こちら)ことからも、やはりその影響は大だったといえるだろう。
 
フィギュア「ヒロインメモリーズ アップル」
 
次回は、西久保監督フィルモグラフィの落穂拾い篇を予定。

J.Jの表記揺れコレクション

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ムービックから当時発売された下敷きより
 
赤い光弾ジリオン』のメインキャラクター3人にはコードネームしか設定されておらず、その本名は最後まで明かされていない。そのコードネームについては、タツノコのこれまでのボツ企画の中から選定されたという。
 
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タツノコの未映像化企画『スカイファイターZ』と『スカイ番長』
タツノコプロ30周年記念全集』より

タツノコの未映像化企画に埋もれていた「J.J」、「チャンプ」、「アップル」はそれぞれどんなキャラクターだったのか不明だが、ジリオンの放映とその人気により、彼らの名前は「ジリオンのキャラ名」として定着したと言っていいだろう。近年話題になったスケートアニメ『ユーリ!!! on ICE』にJ.Jと呼ばれるキャラが登場し、古参のアニメファンが軒並みジリオンを思い出すという現象が見られたことは記憶に新しい。
 
しかし、ジリオンの主人公であるはずの「J.J」だが、その表記は公式においてもかなりブレがある。今回はその表記バリエーションを確認してみたい。
まずは放映された本篇の各話タイトル画面と、予告画面から。

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第1話「コードネームはJJ」タイトル、第7話「死闘!JJ対リックス」予告、第17話「涙!JJをさがせ」 タイトルより

いずれもピリオド等はない「JJ」表記となっている。
エンディングのキャスト表記ではどうだろうか。

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第1話「コードネームはJJ」エンディングより 

第1話では「J・J」表記であり、それ以降の放送でも変更は見られない。ちなみにエイミは第1話のエンディングでのみ「エイミー」表記となっており、ここにも表記揺れが見られる。

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ビデオ『赤い光弾ジリオン 総集編1』より

総集編ビデオではなぜか「JJ」表記となっている。

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最終31話「勝利のラストシュート」より
 
本篇では最終回にキャラクター紹介が流れるが、こちらは貴重な英語表記となっていた。ここでの表記は「J・J」となっており、通常のエンディング表記に準じているようだ。

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OVA赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より
 
逆にOVA歌姫夜曲ではオープニングにキャスト表記が登場。こちらも「J・J」表記となっている。
では紙資料や印刷物ではどうだろうか。制作現場に使用された設定資料や脚本、絵コンテなどを確認してみたい。

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TV版設定資料creations1より

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OVA版設定資料creations2より

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第1話脚本、最終話絵コンテより
どちらもブルーレイBOXの特典から

印刷された脚本では「J・J」、後藤隆幸氏や西久保監督の直筆では「J.J」と書かれているようだ。
准公式となる読み物や、CDのライナーノーツ等となると、それぞれバラツキが目立ってくる。

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絵本『赤い光弾ジリオン1』より

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ぬりえ『赤い光弾ジリオン』より

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CD『赤い光弾ジリオン お洒落倶楽部』より

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カセットシアター「シークレット ティ・パーティ」より

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マンガ(スーパーボンボン版)より

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マンガ(MIX NOISE版)より

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マンガ(歌姫夜曲特典インナー)より

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マンガ(アメコミ版)より

「ジェイ・ジェイ」や「J=J」など、また新たな表記が確認できる。これが公式のチェックの行き届かない雑誌やグッズ類となると、さらに混沌としてくるが、ひとまずここまでのバリエーションを確認したところで今回は区切りとしたい。
 
次回は、一年ちょっと前に出たアップルのフィギュアに関する、後藤隆幸氏のミニインタビューを紹介予定。

アニメディアの描き下ろしイラスト(1987年分)

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アニメディア1987年6月号より
 
学研「アニメディア」は1981年に創刊し、現在も刊行中の老舗アニメ誌。1987年のジリオン放映当時におけるアニメ情報誌はジ・アニメやマイアニメ、アニメックが相次いで休刊、アニメージュニュータイプ、OUTと合わせて4誌まで減少していたが、その中でもっとも低年齢層を意識していたのがアニメディアだった。
 
このアニメディアジリオンの人気に早くから注目し、多様な版権イラストが投入された。
今回はその1987年分を、一部の記事内容も含めて紹介したい。放映終了後の翌1988年になるとOVA歌姫夜曲含めより多くの版権イラストが掲載されているが、そちらはまたの機会に。
 
アニメディア1987年3月号より

アニメディアにおけるジリオンの第一報はこの3月号(2月10日発売)と思われる。以前にも紹介した(こちら)『シューティングハンター ジリオン』時代は、主にコスチュームカラーが異なるほか、足のプロテクターがゴツく、放映された本編よりもっとミリタリー色が強い印象を受ける。
 
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アニメディア1987年4月号より

こちらもまだ放映前の4月号(3月10日発売)。タイトルこそ正式なものとなっているが、トライチャージャーが準備稿である他、J.Jやチャンプの右肩にもなにか装備があり、まだ設定が固まっていなかったようだ。記事には読売広告社の大野プロデューサーからのコメントがあるが、こちらも放映された内容とはかなり異なる。「ギャグは期待薄」とした編集部の分析も見事に外れ、ジリオンはロマンスやお色気においてさえも予想を大きく裏切って視聴者を楽しませてくれることになる。

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アニメディア1987年5月号より

放映直前の5月号(4月10日発売)には後藤隆幸氏描き下ろしのピンナップが掲載。記事は「読者が選ぶ期待の新番組」だが、ジリオンはそのノミネート5作品のうちブッチギリの最下位。ここから1年後には読者人気の一位になるのだから、その下剋上っぷりにおいてもジリオンは特異な作品だったといえる。
ちなみにこの号までは記事に「(C)SEGA」の表記がある。放送前の土壇場でセガはアニメの版権に名を連ねないことになったようだ。


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アニメディア1987年6月号より

6月号は大充実。2号連続で後藤氏の描き下ろしイラストが登場。凛々しくセクシーなアップルと主人公らしいJ.Jの描き下ろし、他に新番組として設定資料が掲載されている。
その設定資料は、チーム名が「ホワイト・ナイツ」だったり、J.Jの設定がWNのチーフだったり、まだ随所に混乱が見られる。また、タツノコ側プロデューサーである岩田弘氏のコメントもあり、「明るい娯楽活劇に」は見事その通りの作品になった。ジリオンにおける岩田氏の影響は意外に大きかったのかもしれない。

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アニメディア1987年6月号より

こちらは4月2日に行われたという結城梨沙ライブのレポート。まだジリオン放送前なので、ジリオンファンで参加した人はほぼいないのではないだろうか。
 

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アニメディア1987年7月号より

7月号には浜崎博嗣氏の手になるピンナップが登場。浜崎氏のアップルはセクシーなものが多いが、このピンナップもその上位に位置づけられるだろう。
記事はアニメにおけるリーダー論。ここでも前号に続き、これまでの「J.Jがリーダー」という設定が正式に否定されている。

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アニメディア1987年7月号より

この特集のためだけに(おそらくはジリオンのルーツの一つとして)描かれたらしい『未来警察ウラシマン』のリュウ。1987年時点のものとしては、かなり貴重なものではないだろうか。


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アニメディア1987年8月号より

8月号では遂にジリオンが表紙を飾っている。本編と離れたシチュエーションであり、またTVシリーズの版権でJ.Jとアップルがカップルとして描かれることは珍しいが、アニメディアでは編集者が絵の内容をオーダーするそうなので、このテーマは編集部の希望なのだろう。のちにマンガ家、イラストレーターとして知られることになる かのえゆうし氏がこの号で同じカップリングのイラストで投稿をしているのも興味深い。
また、記事ではのちにジリオンの多くの版権を手掛けることになる戸部敦夫氏のイラストが初登場。


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アニメディア1987年9月号より

9月号には作画監督 松本勝次氏の珍しいイラストが登場。別ページのファッション特集には後藤隆幸氏によるウェディングドレス姿のアップルが掲載されている。ちなみに、のちに後藤氏自身が手掛けることになるOVA歌姫夜曲でのドレスとはデザインが異なる。
 
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アニメディア1987年9月号より

読者投稿ページ「アニメアイ」の扉もジリオンだが、このコーナーには仕掛けがあり、投稿ページ全般にわたって扉絵のネタをページ左上の小さいマンガで続行している。これは今回確認していて初めて気が付いたのでまとめてご紹介。


アニメディア1987年10月号ふろくより

10月号のふろくには以前にも紹介した(こちら)ポスターが登場。原画は沖浦氏。
他にも別冊「ジリオン99の謎」がふろくに登場しているせいか、記事には版権イラストはなし。
 
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アニメディア1987年11月号より

その沖浦氏のアップルが表紙を飾ったのが翌11月号。この頃のアニメディアの人気投票の女性キャラ部門はアップルが独走態勢に入っており、アニメディアのアップル推しはそのあたりに理由がありそうだ。
特集記事には毛利和昭氏、吉田徹氏のイラストが登場、表紙の沖浦氏を含め、アニメアール祭りとなっている。特に毛利氏のジリオンイラストは非常に珍しいのではないだろうか。

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アニメディア1987年11月号より

アニメ誌らしい、キャラクターへの架空インタビューページにはエイミが登場している。


アニメディア1987年12月号ふろくより

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アニメディア1987年12月号別冊付録のポストカードより
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アニメディア1987年12月号より

12月号でも別冊ふろく、ポスターともにジリオンが登場。すでにトップクラスの人気作扱いになっていることが伺われる。ポスターイラストは沖浦啓之氏、別冊ふろくのポストカードイラストは数井浩子氏。
本誌記事は2ページと少ないが、イラストは黄瀬和哉氏による描き下ろしであり、アニメディアの力の入れようが伺われる。黄瀬氏は以前に触れたように(こちらニュータイプの描きおろしで版権イラストデビューを飾っており、満を持してのアニメディアへの登場となった。
翌1988年1月号では黄瀬氏の初表紙となるJ.Jが登場するが、それはまたの機会にご紹介したい。
 
 
次回は息抜き編。Twitterでネタになっていた「主人公名の表記揺れ問題」を追求予定。

同人誌「歌姫夜曲BURNING NIGHT 作画集」

今回は1989年頃に発行されたと思われる同人誌「歌姫夜曲BURNING NIGHT 作画集」(発行:蒲田行進曲)をご紹介したい。これは前年、1988年に発売されたOVA赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』の原画、ラフ原画、レイアウト、作監修正などが掲載された同人誌で、132ページというなかなかの大ボリュームのため以下はその抜粋となる。

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歌姫夜曲作画集より

表紙は宣伝ポスターで使われたセルの原画だろうか。「さらわれたお姫様を奪還する」という作品コンセプトをよく表している。

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歌姫夜曲作画集より
 
まえがきから推察するに、このサークルは後藤隆幸氏の仕事を追いかけるサークルだったのだろうか。

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歌姫夜曲作画集より

ポスターのボツ案だろうか? 後藤氏の「こまったユ鬼ちゃん」にも登場した『帝都物語』(1988年)あたりが元ネタかもしれない。

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歌姫夜曲作画集より

OP開始早々にドキッとさせられるアップルの着替えシーン。実は全編通してもっとも色っぽいカットかも。

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歌姫夜曲作画集より

ステージには謎の丸い光。実に西久保監督っぽいが、出崎監督一門らしさも感じる。

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歌姫夜曲作画集より

難しいアングルで描かれたJ.J。作画は先ごろTAFF2018でアニメーター賞を受賞された凄腕アニメーター岸田隆宏氏の若き日の仕事と思われる。

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歌姫夜曲作画集より
 
なんと、ゴードの店に集う客たちはTVシリーズのゲストキャラだったようだ。よく見るとケリーやボルサリーノの姿も見える。

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歌姫夜曲作画集より

歌い終わったキメのポーズ。

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歌姫夜曲作画集より

いきなりソラールにひっぱたかれるアップル。

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歌姫夜曲作画集より

今度はガードックに髪を引っ張られる。さすがTVシリーズのノーザウォーリアーズの転生らしく、今回の看板ヒロインにも容赦ない。

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歌姫夜曲作画集より

バイクのJ.J。表情に修正が入っているが、TVシリーズよりおとなしめなキャラに見えるのは、やはり後藤氏の参加による部分も大きそうだ。

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歌姫夜曲作画集より

J.Jとチャンプ。チャンプはTVシリーズより「J.Jの相棒」という側面が強調されているように見える。

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歌姫夜曲作画集より

この同人誌は夏コミで頒布されたと思われるが、実際にパトレイバー劇場版が公開されたのは7月なので情報が古くなってしまっている。当初は前年の冬コミで出る予定だったのだろうか?

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歌姫夜曲作画集より

ホワイトナットー渾身の顔芸。

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歌姫夜曲作画集より

ドラマチックなシーン…からのベタなギャグシーンへ。

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歌姫夜曲作画集より

崩れるケーキも入念に作画されている。

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歌姫夜曲作画集より

蹴りのポーズもカッコイイリックス。

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歌姫夜曲作画集より

ここだけ見ると恋愛モノっぽい?

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歌姫夜曲作画集より

ラブシーン…と言うにはちょっと物足りないかも。

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歌姫夜曲作画集より

TVシリーズ初期を思わせるリックスとの直接対決。

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歌姫夜曲作画集より

OVA版のリックスはTVシリーズと違ってJ.Jとはなんの因縁もないので、純粋に勝負を楽しんでいるようだ。

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アニメV1988年8月号および歌姫夜曲作画集より

西久保監督お気に入りのシーン。このお話の主人公がJ.Jではなくアップルであることを象徴するシーンといえそう。

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歌姫夜曲作画集より

BDボックス発売記念トークショーでセル画が披露され、会場のファンにプレゼントされたカット。

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歌姫夜曲作画集より

ラストシーンのライブの作画は奥田万つ里氏だそうだ。髪の毛の情報量などに顕著な、独特の作画が堪能できる。この同人誌の発売当時は、奥田氏キャラデザ、西久保氏監督のシュラトがちょうど放映中だったと思われる。
また、今回気が付いたが原画スタッフの並びが岸田氏で始まって奥田氏で終わるのは担当シーン順なのだろうか?

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歌姫夜曲作画集より

おまけページ。こうして見ると、BDボックスの鼎談でご本人が語ったように、確かに沖浦氏は浜崎氏の持つ少女マンガ的な華麗さを持ち込みたかったように感じる。

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歌姫夜曲作画集より

あとがき。ちょうどこの頃にあの宮崎勤事件が発覚したので、この著者の方の危機感が本人の想像を大きく超えて現実となってしまったのは皮肉だ。

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歌姫夜曲作画集より

裏表紙。お疲れさまでした。
 
駆け足で紹介したがこれでも全ページの1/5にも満たないボリュームであり、同人誌とはいえ非常に貴重な作品資料といえる。他にもこういった資料をご存知の方はぜひご教示いただきたい。
 
 
次回は、当時のアニメ誌でもっとも充実していたアニメディアの描き下ろしイラストについて。

歌姫夜曲と27話のセル画

今回は軽めの更新。最近Twitterでひょんなことから大阪の「なんや」さんからジリオンのセル画を買わせていただいたので紹介したい。

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赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』セル画

歌姫はOVAということもありセル枚数自体はかなり多いと思われるが、市場に出てくることは少ないのではないだろうか。
なんやさんからはもう一枚、TVシリーズのセルも譲っていただいたので、こちらも話数が特定できしだい紹介したい。
 
ここからは以前MACKYさんに譲っていただいたTVシリーズのセル画を。

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赤い光弾ジリオン 第27話「非情の反逆者リックス」セル画

TVシリーズの第27話「非情の反逆者リックス」冒頭のシーンだろうか。沖浦啓之氏の作監による、コロコロと表情の変わるJ.Jが見どころ。
 
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赤い光弾ジリオン 第27話「非情の反逆者リックス」より
 
実際にフィルムに撮影され、放送されたカットと比べると、見えない部分まで描かれているのが確認できる。
27話のセルは他にもガードックやソラールのものなどをいくつかを保管しているので、そちらも後々取り上げていきたい。
 
沖浦氏のフィルモグラフィを見ると、この27話を終えた後に氏は大阪から上京し、劇場大作『AKIRA』(1988年)の制作に参加したようだ。ヒーローらしからぬ髪型やバイカーファッションなど、『AKIRA』の主人公 金田のルックスにJ.Jとの共通点が多いことは、当時の『AKIRA』原作マンガの人気と考え合わせるとなかなか興味深い。
 
最後に、最近Twitterで知り合った「かんた」さんのHPを紹介したい。
 
すっかり更新頻度が下がった弊BLOGと異なり、驚異的な更新ペースでジリオン情報がアップされている。当時の情報やグッズなどは言うに及ばず、ご本人のイラストやガレージキットの改造記事など、内容も非常に多岐に渡るもので、ジリオンのファンなら是非チェックいただきたいサイトだ。
 
 
相変わらずスローペースの弊BLOGの次回は、同人誌「歌姫夜曲作画集」を紹介予定。