ZILLION ARCHIVE ROOM(Yahooブログ移行版)

Yahooブログから流れてきたTVアニメ『赤い光弾ジリオン』非公式ファンサイトです。元々は放映30周年を記念する週刊ブログでしたがそのまま不定期で続いています。

J.Jのガレージキット

本ブログでは過去に存在したジリオンガレージキット(少数生産のプラモデルのようなもの)について触れたが(こちら)、最近ネット通販でJ.Jのキットの現物を入手することができたのでご紹介したい。
 
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キットのパッケージ

パッケージイラストは元スタジオ鐘夢の数井浩子氏。イラストレーターのクレジットは30年後に追いかけるファンにはとてもありがたい。
けっこう非道なシチュエーションにも見えるが、キャラクターが皆かわいく描かれており、特に朗らかに笑うチャンプは珍しい。

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オフィシャルの証であるNTVの「承認済」シール
 
NTVの承認シールは30年後のヒロインメモリーズでもほぼ同じものが使われており、版権ビジネスの揺るがなさを今に伝えてくれる。

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箱の側面

値札の「¥2500」は定価だろうか。「戦闘服タイプ」とわざわざ書いているので、戦闘服以外のバリエーションもあったのかもしれない。
また、「1989 1/6」という記述も確認できる。これが日付だとすると、1988年でほとんどの関連商品が出尽くした(TVシリーズのLDの毎月リリースのみ1989年も継続)のち、玩具の優先商品化権を持っていたであろうセガのアクションフィギュア等の販売が終了、小さなガレキメーカーにも許諾が下りるようになったのがこの頃と思われる。

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キットのパーツ

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説明書

パッケージの中身はキットと説明書のみ。この説明書には、お便り募集の案内が確認できる。もちろんこのキットが出たのは30〜29年前なので、いまから葉書を送ることはできない。
 
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仮組み

とりあえず粘着剤でくっつけてみたもの。模型はまったくの門外漢のため、色塗りについては断念した。

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側面と背面
 
やはり立体物は様々な角度から鑑賞できるのが楽しい。

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顔のアップ

ディティールはよく作られているが、造型をリアルに寄せた反動か、サラサラヘアーがトレードマークのJ.Jとしては、髪のボリュームにやや物足りなさを感じる。また、この個体はジャケットの首回り部分に成型欠けがあるようだ。
 
このシリーズには他にチャンプとアップル、そしてエイミがラインナップされており、女性キャラにはそれぞれ9話に登場した水着バージョンも存在していたらしい。
以前の紹介のあと、チャンプのキットも存在を確認した

 
キットの製作・販売はアペンディックス(「アペンディックスクラブ」という表記もある)。名古屋の「日本切手」という模型ショップが立ち上げたガレージキットブランドのようだ。アペンディックスは特撮キャラをメインに、ジリオンの後もボーグマン等のキットを出していたが、その活動は1990年代半ばには終了、日本切手も2000年代に閉店したと思われる。
 
自分が入手したキットは中古ではなく未開封品で、やはり名古屋にある大須古本店(http://osubook.net/)で販売していたもの。日本切手の閉店に伴って在庫が流れたものだろうか。ネット上では見かけることの少ないキットだが、これから探される方は「名古屋近辺のネット通販をしていないホビーショップ」あたりが狙い目かもしれない。
 
 
次回は、思いがけず譲っていただいた歌姫夜曲のセル画ほか、セル画関係を紹介予定。

『黄瀬和哉アニメーション画集』とコミックマーケット94の同人誌

今回は、先日開催されたコミックマーケット94にて、ジリオン作画監督を担当したアニメーター 黄瀬和哉氏の画集を入手したので予定を変更してご紹介したい。また、同じくコミックマーケットで販売されたジリオン関係の同人誌もちょっびっとだけご紹介。

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黄瀬和哉アニメーション画集』表紙

黄瀬和哉氏はこのブログをご覧の方には周知の通り、ジリオンでは原画、作画監督、版権イラストなどで作品を支えた中核スタッフの1人で、現在はジリオンのメインキャラデザイナー 後藤隆幸氏とともにプロダクションI.Gの取締役として、また『攻殻機動隊 ARISE』(2013年)や『メイドインアビス』『孤独のグルメ』(ともに2017年)等の監督、キャラデザイン、作画監督等として活躍する現役アニメーターでもある。パトレイバー攻殻機動隊など一連の押井守監督とのコンビはつとに有名で、またジリオンの西久保監督の作品にも、その多くに参加している。

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黄瀬和哉アニメーション画集』より

画集はこれまで黄瀬氏が参加した作品の版権イラストが多くを占める。総240ページのうちジリオン関係は最初の6ページ。大判で鑑賞するカラー原画の魅力はやはり格別だ。

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黄瀬和哉アニメーション画集』より

画集に収録されたジリオン関係のイラストは比較的最近のものに限られる。
 
・2002年のDVDボックスのジャケットイラスト2枚
・2015年のブルーレイBOXのスリーブイラストとそのラフ
・上記のボックスのリリースに合わせて行われたトークショーこちら)で配布されたポストカードイラスト2枚
 
残念ながら、テレビシリーズやOVAの当時に描かれた多数の版権イラストはこの画集には収録されていない。アニメディアの表紙など非常にメジャーなものもあるので若干の不満があったが、その理由は画集の特典として配布された小冊子『黄瀬和哉のうすい本』に書かれていた。

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黄瀬和哉のうすい本』より

雑誌掲載資料などはやはり管理が甘いのか、30年前の作品ともなると原画が散逸しているようだ。
本ブログではこれまで何度か黄瀬氏のジリオン版権イラストを紹介しているが、この機会に既知の版権リストを挙げておきたい。
 
ニュータイプ1987年9月号 本文イラスト
アニメディア1987年12月号、1988年1月号、7月号 本文イラスト
アニメディア1988年1月号 表紙(&ピンナップ)
・アニメV1988年7月号 表紙(&ピンナップ)、本文イラスト
・OUT1988年8月号 本文イラスト、ポスター

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『アニメV』1988年7月号より

また、ムービックアニメイト)のグッズにも黄瀬氏の手になると思われるイラストが散見されるので、参考までにご紹介したい。

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ムービックの各種グッズ(ポスター、ポストカード等)に使われたイラストより

後藤隆幸氏の画集『Gの旋律』でも、アニメディア関係のイラストはほとんど掲載されていなかった。また、ムービックのグッズイラストもブルーレイのブックレットではグッズから復元を試みているなど、こちらもいくつかの原画が現存しない可能性が高い。今後のアニメ作品アーカイブの課題の一つだろう。
 
特典小冊子である『うすい本』には、上記イラスト捜索ページ以外に『爆炎CAMPUSガードレス』(1994年)や『BLOOD THE LAST VAMPIRE』(2000年)などの修正原画や、同業者の画集発売を祝うコメントなどが掲載されている。アニメアールで黄瀬氏と腕を競い、ジリオン以降IG作品をともに支え続けた沖浦啓之氏のコメントが年月の重みを感じさせる。
 
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黄瀬和哉のうすい本』より

黄瀬和哉のうすい本』を特典とした発行元アニメスタイルの通販も始まっている。
 
 
また、8/30より西荻窪のササユリカフェにてこの画集と連動した黄瀬和哉展が10/1まで開催される。ササユリカフェはやはりIGの後藤隆幸氏の個展も去年開催しており(こちら)、こちらにも足を運んでみたい。
 
攻殻機動隊」手がける黄瀬和哉の資料展示イベントが開催(アニメ!アニメ!ビズ)
 
 
ここからは、コミックマーケット94で頒布されたジリオン関係を含む同人誌を紹介。

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金子志津枝ありがとのまとめ本』表紙

著者の金子志津枝さんは映画ドラえもんや映画モンスターストライク、最近ではTV『LOST SONG』、現在上映中の『劇場版ポケットモンスター みんなの物語』、現在放映中のTV『異世界魔王と召喚少女の奴隷魔術』(すべて2018年)などでキャラクターデザインをつとめる人気アニメーター。金子さんはジリオンのファンイラストをTwitter上で公開しており、この本にもそのイラストの一部+αが収録されている。ジリオン関係のイラストはこの1ページのみだが、現代的なエッセンスや独特のフェティッシュな感覚を併せ持ったジリオンキャラはとても魅力的だ。

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『ありがとのまとめ本』より

この同人誌は当日完売したようだ(筆者が到着時点で残り3冊だったので複数買いは断念)が、金子さんのツイートによるとまた入手機会はあるかも、とのこと。気になる方は金子さんのツイッターhttps://twitter.com/QQQnekoQQQ)をチェックされたい。もちろん、ドラえもんや他の参加作品のイラストもとても魅力的なのは言うまでもない。

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赤い光弾ジリオン30周年アニバーサリーファンブック WN30th』表紙

こちらは去年のコミックマーケット(C92)で販売され、このブログでも告知したWN30thさんの本だが、今回(C94)も販売されたそうなのでご紹介。

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赤い光弾ジリオン30周年アニバーサリーファンブック WN30th』より

Twitterで精力的にジリオンのファンアートを発表されているマッコママさんなど、ジリオンファンのマンガやイラストを集めたフルカラー16ページ。現在はpixivの通販サイトBOOTHにて、なんと200円で販売されているので、買いそびれた方はそちらを確認されたい。
 
WN30th
 
次回は前回の予告通り、J.Jのガレージキットを紹介予定。

ジリオンのタイトル変遷と第2話のセル画

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ニュータイプ1987年5月号より。セル原画は井口忠一氏


既出(こちら)の通り、『赤い光弾ジリオン』の企画タイトルは『シューティングファイター ジリオン』だった。タイトルに「赤い光弾」が入ったのは4月の放送の直前、2月~3月頃の土壇場だったようで、放送開始前の各アニメ誌には情報の混乱が見られる。


赤い光弾ジリオン』プルーレイBOX付属ブックレットより

原作玩具『超高速光線銃ジリオン:1986年8月ごろ?
企画タイトル『シューティングファイタージリオン:1986年11~12月ごろ
アニメディア3月号『シューティングハンタージリオン:1987年2月10日発売
アニメージュ3月号ジリオン(仮)』:1987年2月10日発売
ニュータイプ3月号『シューティングファイタージリオン(仮題)』:1987年2月10日発売
正式タイトル赤い光弾ジリオン』:1987年4月12日放映開始
月刊OUTは放映前の新番組情報なし

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また、トップに引用したニュータイプ 5月号(1987年4月10日発売)にも見られるように、基本設定や各話サブタイトルなどもかなりギリギリでの決定だったようだ。敵の「ノーザ星人」は比較的早く決まったようだが、惑星マリスは「惑星ソール」、特殊部隊ホワイトナッツは「特殊部隊ジリオン」、そのネーミングを引いてかトライチャージャーは「ジリオンバトラー」や「エイトチャージャー」、第1話サブタイトル「コードネームはJJ」が「その名はJ.J」…といった具合。

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ニュータイプ1987年4月号より

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ニュータイプ1987年5月号より

プルーレイ付属ブックレットにもその名前が登場するラスボス「バルグⅢ世」はノーザの総司令官だろうか?実際の放映ではラスト2話でようやく宇宙に出たことを考えると、ノーザの母星など、それ以上に舞台を広げるのは話数的に無理だったろう。ラスト2話にしても、宇宙が舞台とはいえ放映初期の日食ネタなどで言及され、画面にいつも登場していたリル(惑星マリスの衛星)だからこそ視聴者の違和感は最小限に留められたと思われるので、やはりあのラストで正解なのだろう。

ここからは、またセル画を紹介したい。

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第2話のセル画

こちらは第2話から、暗闇を疾走するライディングセプターに立ち上がってジリオンを構えるJ.Jのカット。ツイッターのフォロワーの方と、なんと第2話作画監督浜崎博嗣氏から直々にご教示いただいた。お二人に感謝したい。

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赤い光弾ジリオン第2話『頭上の敵をうて!』より、上記のセル画が使われたカット

この第2話で絵コンテを手がけた押井守氏は2年後の『機動警察パトレイバー THE MOVIE』(1989年)でもやはり真っ暗なトンネルの中をレイバーに疾走させているので、よほどお気に入りのシチュエーション(それともスケジュール対策の奥の手か)であるらしい。
浜崎氏と組んだ際の押井氏はその仕上がりにかなり満足したようで、後年こんなコメントを残している。

梶山寿子著『雑草魂~石川光久 アニメビジネスを変えた男~』より。
ちなみに押井氏の担当回に黄瀬氏や沖浦氏は参加していない

次回は最近手に入れたJ.Jのガレージキットを紹介予定。

歌姫夜曲30周年!ジリオンのスピンオフ作品いろいろ

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OUT1988年8月号より
 
OVA赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』(1988年)は今日6/21がその発売30周年となる。
 
本作はTVシリーズの好評を受けて制作されたスピンオフ作品。スタッフはメインキャラクターデザインの後藤隆幸氏を総作画監督に迎え、西久保監督以下TVシリーズのメインスタッフが続投したほか、武田一也氏や奥田万つ里氏、岸田隆宏氏などの強力なスタッフが新たに加わっている。
 
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同人誌「歌姫夜曲作画集」より
 
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ジリオン クリエーションズ2』より
 
以前にも触れたように(こちら)本作はTVシリーズを放映していた日本テレビや、ビデオを発売していたバップではなく、タツノコキングレコードによる製作となっている。そのためか本作は音楽面が充実しており、タツノコの植田、キングの大月の両プロデューサーや、西久保監督の意向が強く反映された作品といえそうだ。
 
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赤い光弾ジリオン』ブルーレイBOX特典ブックレット 浜崎博嗣氏・黄瀬和哉氏・沖浦啓之氏の鼎談より
 
また、1988年6月のリリースと前後して、本作同様にジリオンのスピンオフ的なスタンスの作品がいくつか登場しており、それぞれのクリエイターによる「俺ジリオン」の競演が楽しめる。発売日順にご紹介したい。
 
『あぶないMUSIC』CDジャケット。駿河屋より引用
 
まずは「歌姫夜曲」のサントラも兼ねているCD『あぶないMUSIC』(6月発売)。ラジオ番組を模したナンセンスなパロディが楽しく、また、ラストには有名な深夜ラジオ番組「ジェットストリーム」のようなペーソスも漂う。
TVシリーズで文芸を担った関島真頼氏の考える「ジリオンの幅」は本作においても健在だが、ホワイナッツの掛け合いが魅力のジリオンにおいて、アップルだけをフィーチャーした本作にはやや物足りなさも感じる。
 
『エイミ・ペンギンズダイアリー』LDジャケット。駿河屋より引用
 
続いて同じくキングから7月に発売されたミュージックビデオ『エイミ・ペンギンズダイアリー』は、近年登場したブルーレイBOXに映像特典として収録された。自分のようにブルーレイ化によって初めて観たファンも多いのではないだろうか。
本編はエイミの語りをブリッジに配したソング集で、映像はTVシリーズのシーンをビデオクリップ的に編集したものが使われている。
 
赤い光弾ジリオン JJ対リックス 宿命の対決』LDジャケット。駿河屋より引用
 
同じ7月にはバップからも総集編ビデオ『JJ対リックス 宿命の対決』(1988年)が登場。こちらも、TV版の映像を使用しつつもアフレコは新規に行われており、J.Jとリックスの対決をクローズアップしたシリアスな作りとなっている。
本作の構成はTV版で脚本の要として活躍した伊東恒久氏が手がけており、「伊東版ジリオン」として骨太な作風が堪能できる。
 
赤い光弾ジリオン チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ』LDジャケット。駿河屋より引用
 
バップのもうひとつの総集編、8月に登場した「チャンプ&アップル ファンタスティックメモリーズ」の構成は、こちらもやはりTV版脚本スタッフの渡辺麻実氏。
TV版のチャンプ回である第9話「ぬすまれたジリオン」と、アップル回の第25話「優しき逃亡者アップル」をベースに、そのブリッジとして声優ネタを絡めたセルフパロディを展開した。
 
『シークレット ティ・パーティ』パッケージ
 
渡辺氏はカセットブック「シークレット ティ・パーティ」(9月発売)も手掛けており(こちら )、こちらも劇中劇を基本としたパロディ、声優ネタが頻出、シリアスな伊東版と好対照をなしている。
 
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アニメV別冊『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より
 
もう一つ、アニメVから発売された歌姫のムック(8月発売)から、歌姫のプロローグ的な小説「歌姫序曲」。著者はこちらも渡辺氏だが、本作は歌姫に直接繋がるエピソードであるためか、パロディなどはごく控えめなものとなっている。
 
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後藤隆幸作品集MIX NOISE』より
 
10月に出版された後藤氏のコミック「MIX NOISE」のその半ば以上はジリオンネタで占められている。コミックのストーリー協力には『ドテラマン』(1986年)でも後藤氏と組んだ貞光紳也氏がクレジットされており、ほのぼのギャグと正統派の外伝ストーリーが楽しめる。
 
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VHS版『赤い光弾ジリオン 歌姫夜曲』より、インナーのオマケ漫画
 
このコンビは歌姫の特典オマケ漫画も担当しており、TV版のイメージをもっとも色濃く残すチームと言えそうだ。
 
これらの展開が終了した翌1989年は、4月に植田もとき氏プロデュース、西久保氏が監督の『天空戦記シュラト』がTVに、7月に石川光久氏と押井守監督、黄瀬作画監督の元、ジリオンの作画スタッフが多数参加した『機動警察パトレイバー THE MOVIE』が劇場に、12月には後藤氏がキャラデザと総作画監督をつとめた『敵は海賊』が衛星放送にそれぞれ登場し、ジリオンの主要スタッフは各作品へと散ってゆくことになる。
 
 
次回は当時のちょっとした情報と、新事実が判明したセル画を引き続き紹介予定。

記事修正祭り

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第8話のセル画

今回はこれまでの記事の修正情報と、前回に引き続きジリオンのセル画を紹介したい。
 
赤い光弾ジリオン』のキャラクターデザインはコンペ形式で行われた。コンペの参加者について後藤隆幸氏は、浜崎博嗣、水村良男の両氏とともに参加した、とブルーレイBOXのブックレットでコメントしている。
以前の記事では、後藤氏のコミックエッセイの「T氏」の謎を水村氏と推測していたが、今回なんと、やはりコンペに参加された浜崎博嗣氏からTwitterで直接「水村氏である」と教えていただいた。
また、コンペ時のデザインから後藤氏による決定稿までに、浜崎氏、水村氏のエッセンスも取り入れられているという新情報もいただいている。その影響がどこに現れているかを想像するのも興味深い。(更新した記事はこちら
 
他に、浜崎氏の過去ツイートより、2話で登場し、そのまま準レギュラー的に定着したパトロール兵のモデルも明かされた。なんと、モデルは浜崎氏ご本人ということで、声を担当した西村氏ともども「中の人も外の人もミュージシャン」という極めて贅沢なキャラクターだったようだ。(更新した記事はこちら
 
その他過去記事では、ぬりえの画像を追加(こちら)している。ぬりえは基本的には絵本とよく似た構成だが、やはり子供向けテキストの破壊力が凄まじい。

イカのぬりえ『赤い光弾ジリオン』より

ここからは前回(こちら)同様、セル画の紹介。
 
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第8話のセル画
 
第8話「海底基地をぶっとばせ!」はメルウが出てくる回だが、J.Jの水着回でもある。
この回の作監は水村良男氏。繊細な浜崎氏とはまた違ったリアルタッチの作画が、J.Jに意外なマッチョ感を与えている。
 
 
次回は、OVA歌姫夜曲の発売30周年企画を予定。

放映開始31周年!『赤い光弾ジリオン』第1話のセル画

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第1話のセル画
 
赤い光弾ジリオン』は31年前の今日 1987年4月12日朝10時に、日本テレビ系列でTV放送がスタートしている(こちら )。
今回は、その第1話「コードネームはJJ」で使用されたセル画をご紹介したい。
第1話はメインキャラクターデザインの後藤隆幸氏がTVシリーズで唯一、作画監督として参加したエピソードであり、やや目の大きい可愛らしいキャラクターが印象的だ。
 
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いずれも第1話より
 
このカットにも後ろ姿で登場している1話のゲストキャラ、アディはその存在感がスタッフに気に入られたのか、第22話「ウソから出た大勝利!」に再登場している。
アディはジリオンで唯一の後藤氏デザインのゲストキャラでもあり、DVDボックスのジャケットにも登場した。アフレコ直前まで男の子の設定だったこともあってか(こちら)、同じく後藤氏の手がけたサイコーユ鬼やエイミの持つ可愛らしさとはまた違った魅力を持つキャラクターとなっている。
 
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DVD BOX Disc.1のジャケットより
 
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第1話本編より
 
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スーパーボンボン1987年7月号より

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アメコミ版第1集より
 
アディと一緒にいたこの犬はスーパーボンボンのコミカライズ版(こちら)やアメコミ版(こちら)にも登場しているが、再登場時にはリストラされている。22話のテーマ的に、アディが心を許せる対象がいてはお話が成り立たない、と判断されたのかも知れない。このあたりの設定のユルさは1話完結作品ならでは。
 
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第1話の動画より
 
第1話の本編では、J.Jは正規の戦闘スーツを着ていない。その意味でも、この第1話はプロローグ的な意味合いが強そうだ。
 
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アニメージュ1987年6月号より、コメントは関島眞頼
 
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アニメージュ1987年7月号より
 
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OUT1987年11月号より
 
高いクオリティを見せた第1話は、スタッフの士気と視聴者の期待とを高めることに成功した。そして『赤い光弾ジリオン』は年末までの3クール(本編31話+再放送6話)を駆け抜けて行くことになる。
 
 
今回紹介したセル画・動画は、(株)ルノテオのMACKYさんからご提供いただいた。
MACKYさん、貴重な資料のご提供ありがとうございました。

西久保監督フィルモグラフィ(5)現代篇

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アタゴオルは猫の森』劇場用パンフレットより
 
(前回はこちら 
前回は『イノセンス』(2004年)までを追ったが、その前年の西久保監督作として『ハートカクテル・アゲイン』(2003年)が抜けていたので補足したい。
 
 
ネット上でも情報が少ない『ハートカクテル・アゲイン』は、マンガ家わたせせいぞうの原作をベースに新たなストーリーで作られたOVA。そもそも原作マンガが毎回数ページの掌編であるため、本作も40分強という短い時間に9本の短編を収録している。
マンガ『ハートカクテル』はジリオンと同時期の1987年にアニメ化されており、ほとんど動きのないナレーション主体の短編ながら、深夜の放送にふさわしい大人のムードを醸すことに成功していた。本作『〜アゲイン』はその原作の登場20周年記念作品であり、製作はプロダクションI.Gではなく、ハルフィルムメーカーが手がけている。
OVA『カリフォルニア・クライシス 追撃の銃火』(1986年)で鈴木英人風のアニメーションを送り出した西久保氏にとって、わたせ氏の絵柄や、音楽・世界観のアメリカ志向などはお手の物だったことだろう。本作でアニメーション作品の監督復帰を果たした西久保氏は、以降、精力的に監督作を送り出してゆく。
 
 
天空戦記シュラト』(1989年)から実に14年ぶり、そして現在のところ最後の西久保監督によるTVシリーズが『お伽草子』(2004年)となる。
本作はプロダクションI.Gが社運をかけて挑んだ大作『イノセンス』直後の作品にあたり、西久保監督に作監黄瀬和哉氏など『イノセンス』組が多数参加し、TVシリーズとは思えぬリッチな映像が堪能できる。I.GのTVシリーズは比較的若手にチャンスを与える傾向を感じるが、本作ではメインをベテランスタッフで固めており、それだけI.Gが「絶対に失敗できない」状況だったのでは、とも思わせる。
平安編と現代編でメインスタッフを入れ替えるなど、意欲的な挑戦も盛り込んだ本作に続き、40歳で一度はアニメーションを離れた西久保氏は、50歳にして新たなアニメーションのフィールドに踏み出すことになる。
 

西久保氏にとって『「エイジ」』(1990年)以来2作目の劇場監督作品となる『アタゴオルは猫の森』(2006年)は、これもプロダクションI.Gではなく、デジタルフロンティアによるフルCG作品となる。西久保氏が起用された経緯はプロデューサーが以前観た「音楽に凝った作品」の監督だったから、ということだそうだが、それはおそらく『街角のメルヘン』(1984年)のことだろう(こちら)。また、もちろんCGを大量に使用した『イノセンス』および『イノセンスの情景』(2004年)での現場監督としての手腕も、大いに期待されていたと思われる。
 
初CG作品にも自らの持ち味を活かして取り組んだ西久保氏は、色彩設計遊佐久美子氏やプロップデザインの荒川真嗣氏などの常連スタッフの力も借り、膨大な原作マンガをその外伝をチョイスすることでコンパクトな中編(81分)としてまとめ上げている。
 
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アタゴオルは猫の森』劇場用パンフレットより

世界観の魅力ではなくキャラクターの魅力に特化した本作は、主人公ヒデヨシの破天荒なキャラクターに「物語」という手綱をつける苦心が伺われる作品となった。この欲の塊のような主人公にノレるかどうかで、本作の評価は大きく分かれるだろう。
また本作は、音楽の楽しさを演出的に押し出す一方で、脚本的には音楽の持つ危険な側面にも触れる尖ったテーマを内包しており、心温まるシンプルなファンタジーを期待したであろう観客に対して優しくない作りとなっている。
このミスマッチはしかし、西久保氏の『天空戦記シュラト』や『ジョバンニの島』にも見られる「物事を一面的に描かず、その正負の両面を描く」という意図的な演出の一環であるかも知れない。ジリオンでも「ラストで敵を助けたのは納得いかない」という評をいまだに目にするが、そこが(職人監督と思われがちな)西久保氏の作家性であるともいえる。
 
このアタゴオルと並行して、西久保氏はもう一本の映画にも参加している。
 
立喰師列伝』予告編

押井守監督作『立喰師列伝』(2006年)は実写をコラージュした人形劇のような、一種のパタパタアニメ。手法としては伝説のコメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」でテリー・ギリアムが用いたアニメーションにも近く、西久保氏は本作に演出として参加している。
 
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八王子夢美術館「押井守と映像の魔術師たち」展図録 西久保氏インタビューより
 
西久保氏は押井監督の薀蓄劇に同じ監督として苦言を呈しているが、この経験がのちのコンビ作『宮本武蔵』に繋がっているように思える。
 
 
スカイ・クロラ』(2008年)はまたしても押井監督とのコンビ作。演出として参加した西久保氏は本作の制作にあたり、押井氏から「わかりやすく」というオーダーを受けたそうで、画面的にはハイキーやローキーでディティールを飛ばす傾向のあったこれまでの(劇パト2以降の)押井-西久保作品と比べ、やや見やすく、やや平板とも思える画づくりがなされている。
 
西尾 今、一所懸命、理論武装してるんじゃないですか。インタビューする機会あったら、突っ込んでみてくださいよ(笑)(編注:この後、「スカイ・クロラ 絵コンテ」の巻末インタビューで訊きました)。で、その清涼感のあるキャラクターという話でいけば、色も結構大きいと思うんですよね。ノーマルなシーンって、影が結構ついてるんですけど、影の色がそんなに濃くないんで、パッと見ると影なしに近い印象になっているんです。影なし作画にするっていうのは多分、押井・西久保組ではありえないので。
―― ありえないですね。
西尾 光と影の魔術師なんで(笑)。それでも『スカイ』の作業中に「影を足してくれ」という要望が何度か出ましたけど。
―― その要望はどこから出るんですか。
西尾 西久保さんです。西久保さんは、影が大好きなんで。「2号影足してくれ」と言われて「俺、2号影は巧く描けないんだけどなあ」とか(笑)。
 
また、西尾鉄也氏による本作の制作レポートマンガで、押井組における西久保氏の役割が垣間見えるのも興味深い。『イノセンス』のDVDコメンタリーでも見られた「硬の押井、軟の西久保」という凸凹コンビぶりが伺える。
 
 
 スタッフごとに、持ち帰った写真は様々である。西尾は自らがレイアウトする画面を充実させる為に、現地の人々の生活風俗をデジカメに記録し、美術監督の永井は、カメラマンが押井の指示を受けて撮影したポイントのディテールを詳細に撮りためた。押井と共に現場を切り盛りしてゆく演出の西久保はムードメーカー。西久保の向かうところ、もっぱら笑いが絶えなかった。勿論プロデューサーの石井は、夜な夜な領収書とチップの精算に明け暮れていた......。
 
 
宮本武蔵 双剣に馳せる夢』(2009年)は、元々は海外のTVドキュメンタリーの企画だったそうで、武蔵というテーマは押井守氏が選定、脚本も自らが書き下ろした。本作はこれまでの「押井監督、西久保演出」ではなく、同コンビによる「押井脚本、西久保監督」作品となる。
個人的に、本作は西久保監督の最高傑作ではないかと思う。また、「伝奇作家」としての押井守氏の代表作とも思える。
乗馬剣法として考案されたとする二刀流のアクションシーンはアニメのみならず邦画としても目新しい剣戟を実現しており、『お伽草子』から進化しているのはもちろん、『獣兵衛忍風帖』(1995年)『ストレンヂア 無皇刃譚』(2007年)といった本格派のアクション時代劇アニメともまた異なるリアルな手触りを観るものに与えることに成功している。また、これまでストーリーの進行を止めがちだった西久保氏の音楽へのこだわりは、国本武春氏による浪曲ロックによってストーリーと完全に融合しつつ昇華され、他では味わえない特異な感動を呼び起こす。
惜しむらくは、本作が劇場作品となったことで「物語」を求める客とのミスマッチが生じたことだろう。また押井作品特有の薀蓄こそを聞きたかった押井ファンの期待をあまり満たさなかったこともあり、本作が埋もれてしまっているのは残念だ。個人的には、あと5本くらいの「押井伝奇」ミニシリーズとして、他の題材も見てみたいところだ。
 
本作以降、押井守監督が実写に専念するようになってからは、西久保氏が旧「押井組」を率いる仕事が目立つ。話題となった以下のCMなどもそれに当たるだろう。
 
東京ディズニーリゾート CM 「夢がかなう場所」篇
 
NEXT A-Class
 
ディズニーリゾートのCMは典型的なボーイミーツガールの「その先」を描いており、ミニーマウスを演じていた奥様の水谷優子さんと何度もディズニーランドを訪れたという西久保氏の思い入れが窺われる。
かたやベンツのCMでも、クルマ好きの西久保氏らしい、クルマの魅力をアピールする作品となった。本作には、ジリオン以降の付き合いである車両作画のエキスパート 水村良男氏も参加している。
 
映画 ジョバンニの島 本予告
 
2018年現在における西久保監督の最新作が、映画『ジョバンニの島』(2014年)となる。ドラマ『北の国から』の脚本で知られる杉田成道氏の原作、脚本である本作は日本音楽事業者協会音事協)の出資によるその創立50周年記念作品でもあり、アニメーション映画としては特異な成り立ちを持っている。
音事協能年玲奈さんの独立騒動の際にかなりイメージを悪くしたが、その能年(のん)さんを主役に抜擢した近年の話題作『この世界の片隅に』(2016年)と本作は、ともに太平洋戦争の末期を描いたアニメーションでありながら、その制作経緯やプロモーションにおいては対照的な立ち位置の作品といえる。
 
ともあれ、アニメ作品としての本作はとことんウェットな題材とクールな西久保演出が絶妙なバランス感覚を見せ、印象的な「銀河鉄道の夜」の引用や、「カチューシャ」「赤とんぼ」に代表される童謡の巧みな使い方など、監督 西久保瑞穂の集大成ともいえる傑作となった。
日本での興行的な失敗はあったものの、本作は日本のみならず世界各国で多数の賞を受賞し、なかでもアヌシーでの審査員特別賞の受賞は「押井監督の影武者」的なイメージで語られがちだった西久保氏の名を改めて知らしめることとなった。
ジリオン以前の『デジタルデビル物語 女神転生』(1987年)、ことによると『カリフォルニア・クライシス』(1986年)以来、西久保組として色彩設計などで氏を支えた遊佐久美子氏も、本作の評価でその溜飲をようやく下げたのではないだろうか。
 
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アニメV別冊 赤い光弾ジリオン歌姫夜曲より

その後、西久保氏の監督作品は発表されていない。2016年の水谷優子さんの訃報では夫 西久保氏の今後も心配されたが、昨年末に行われた後藤隆幸氏とのトークイベントでは元気な姿をファンの前に見せてくれていた(こちら)。
自分もジリオン以来の一ファンとして、今後も西久保監督ならではの、クールさと暖かさが同居した作品の登場を期待したい。

(お知らせ)
ジリオン放送30周年に合わせて開始し、これまで毎週記事を追加してきた本ブログですが、今後は不定期更新となります。
これまで読んでいただいた皆様、ありがとうございました。そして『赤い光弾ジリオン』を世に送り出してくれたすべての関係者に、最大限の感謝を捧げたいと思います。
 
それでは、また近いうちに。